帯広信用金庫「地域シンクタンク機能の強化と創業支援融資」

第3回 金融最前線コンテンツ「地域と成長」

~ おわりに ~ チーズ・バンク構想より、わたしたちから新しいプラットフォームの提案

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 今回、帯広信金の増田理事長と秋元部長のインタビューの中で、幾度も話題に挙がっていたのは、基幹産業の周辺の第二次産業の育成、また、そのための外部連携の強化です。これは、十勝固有の問題のみに留まらず、自立した経済の確立を目指した産業クラスターづくりに関わる点であるという意味においては、日本の各地域の共通の課題であると考えます。十勝野フロマージュの赤部社長のような素晴らしい技術をお持ちである、ものづくり職人は日本の地域には沢山おられるのだろうと思いますし、またそのような事業者へ成長資本の機能と販路・流通拡大を提供する必要性を改めて実感しました。

 販路・流通拡大で考えるべきは、地域産業をダイレクトにグローバルな産業連関に位置づけ直すこと。グローバルな規模で、販路や調達網を考えなければいけません。つまり、商社機能が必要です。また、実際グローバルな商取引となると、契約書の問題や決済の問題、あらゆる新しい技術的問題が発生してきます。それらを全て地域でカバーするというのは現実的には難しいものがあります。

 ゆえに、一つの具体例として、下記の図にあるような、地域金融機関と連携し、成長資本の機能とグローバルな商社機能が地域へ流れる仕組みを提案します。
 特徴的なのは、これらの販路・流通拡大支援や事業支援をNPOで展開するという点です。
地域の構造的問題から発生する地域間の格差は、ひとつの社会問題であり、それを解決する手段として、地域の経済的自立は最も大きな課題です。冒頭で述べさせて頂いたとおり、地域の成長に日本の成長の鍵があるということを前提にすれば、日本の経済成長に密接に関わりのある、大きな社会問題なのです。そういった理念に共感して結ばれた法人・個人が連携・協働し相互の活動を支援し合える人と情報のネットワークを実現したいのです。例えば、下記の図でいえば、熟成チーズを海外展開する際、どんなニーズがあるのか、どういったマーケティングが有効なのか、といったとき、その分野のマーケティングのプロや、商社機能を提供できるプロを、地域の中小企業や地域金融機関へ向けてコーディネートできるようなプラットフォームです。

 NPOで展開するのは、地域の構造的問題や経済的自立の重要性を、社会にインパクトのあるメッセージとして訴える必要性があり、その問題自体を社会のものとして扱っていきたいからです。NPOというと、日本では元々の成り立ちが、阪神大震災時の相互扶助をキッカケとしていますから、NPO=ボランティアというようなイメージが未だに強いかもしれません。一方、非営利セクターの発達が著しいアメリカでは、NPOとは行政や企業や個人のレベルで解決できないような難易度の高い、ある特定の問題を解決に導く、高度に専門的な知識をもったプロフェッショナル集団として認知されています。また、そうした専門性が高く、経営に信頼のおけるNPOが多数存在していますから、企業側も、NPOとの協働を積極的に行っています。
 ここ最近、日本においても、企業の側で、従来の慈善活動とは一線を画した社会問題解決型のマーケティング手法が意識されはじめ、テレビCMでも、特定の商品を購入することが、環境保護や食糧支援などの社会貢献に結びつくと訴えるような販促キャンペーンを頻繁に見かけるようになりました。このようなトレンドは、企業側・消費者である個人の側の両方において、社会問題解決に対する注目のあらわれだと思いますし、今後、専門的なNPOが増えていけば、企業との協働は今以上に行われ、非営利セクターへの期待はますます高まっていくように思います。このような社会的背景もあり、NPOで展開するのがふさわしいと考えました。 

 そうした経緯から、現在、わたしたちは実際に、この問題に共感頂ける金融業界・商社関係者、その他プロフェッショナルの方々と共に、このようなNPOの設立へむけて企画を進めています。(今後の経過は、また別の形でお知らせいたします。)


以上、第3回 金融最前線コンテンツ「地域と成長」終わり