2012/6/13開催 HC資産運用セミナーvol.054セミナーレポート
HCセミナー
《 セミナーのまとめ 》
投資の原点は事業への投資
ある企業(事業)自体に企業(事業)価値がないならば、その株式も社債も、その企業への融資も、投資価値がないはずです。株式か社債か融資かという選択の前に、投資対象としての企業価値に関する判断が先行するというのが、本来の投資のあり方であったはずです。
投資の機能の制度的分業化
金融の社会的機能の拡大に伴い、制度的分業化が進行し、株式や社債(債券一般)などの証券は資本市場を経由した資産運用業の対象となり、融資は銀行業の対象となりました。さらに、資産運用の中でも、株式と債券は別の対象というように専門性に応じた細分化が進みました。
資産の裏側にある企業の資金調達
株式、社債、融資などの資産は、裏からみれば、企業の資金調達活動から創出されるものです。資産の種類、銀行業と資産運用の区分を超えて、産業界への資金供給という金融の社会的機能としては、同じものです。
資金調達側の視点にたっていない金融の現状
資金調達を行う企業の立場からいえば、資金使途に適合した方法で必要額を調達できることが第一義的に重要であって、株式か社債か融資かというような手段の選択は、二次的な意味しかもちません。先に、株式や社債や融資ありと考えるのは、細分化した業界の都合にすぎません。
伝統的資金調達とアセットファイナンス
理論的には、企業の資金調達には、二つの基本形があります。伝統的な方法は、バランスシートの右側を使う方法、即ち債務や資本を増やす方法です。新しい潮流は、アセットファイナンスと呼ばれるもので、バランスシートの左側を使う方法、つまり、資産を売る(流動化する)ことによる調達です。
アセットファイナンスとファンド
アセットファイナンスによる資産売却は、資金調達が目的であることを明確にするために、売却ではなく流動化と呼ばれることが多いようです。流動化に際しては、ファンドの利用(即ちファンドへの資産売却)がよくみられます。
キャピタルストラクチャ
バランスシートの右側を使う伝統的方法でも、多様な株式と債務を組み合わせた調達、株式と債務(債券・債権)の多様な中間形態(英語で中二階の意味でメザニン)による調達が行われます。この組み合わせのことを資本構成、英語でキャピタルストラクチャといいます。キャピタルストラクチャのどこに投資するかというのが、資産選択の基本です。
アセットファイナンスのキャピタルストラクチャ
アセットファイアンスから生まれた不動産などの実物資産のファンドなどにも、多くの場合、組成方法の中にキャピタルストラクチャを工夫します。
キャピタルストラクチャの法律上の意味
企業(あるいは実物資産も同じですが)は事業活動を通じてキャッシュフローを生み出す仕組みです。キャピタルストラクチャは、そのキャッシュフローを投資家に配分する仕組みです。キキャピタルストラクチャの位置の違いは、その配分を受ける法律上の権利の優先劣後関係を意味します。
事業価値とキャピタルストラクチャ価値
事業価値は、ネット事業キャッシュフローの現在価値です。その配分の仕組みに過ぎないキャピタルストラクチャを工夫することによっては、事業価値は本質的には変り得ません。キャピタルストラクチャの多様化は、単なるリスクの細分化であり、投資家の選択肢の拡大を意味するにすぎません。
投資銀行業務の解体と再統合
企業金融の総合サービスとしての投資銀行業は、歴史的な分業化により解体へ向かい、資本市場を中心とした業務へ特化していきます。その後、自己勘定投資や資産流動化事業を通じて、解体した金融サービスを、再び新しい形に統合していきます。
規制を受けないファンドという投資銀行の登場
投資銀行の変容とともに、ファンド(実物資産やプライベートエクイティ等)という、規制の外で、企業金融の総合サービスを展開できる業態が、急激に拡大してきました。キャピタルストラクチャ全体をカバーできる投資です。ここに、再び、投資の原点への回帰が見られるのです。
ファンドの積極的な資産創出機能
企業再編等においては、ファンドが直接に企業等から株式やメザニンなどを引き受け、また融資等を実行します。ファンドが投資銀行機能を果たし、融資も行うという意味では、銀行機能すら果たしているのです。
次回、2012年 HC資産運用セミナー第7回は『実物資産投資とアセットファイナンスの意義と方法~資産を使った資金調達の仕組みと資本市場の構造変化~』です。
なお、本セミナーで実施致しました「セミナーテーマに関するアンケート」の結果に関しましては、
「HCセミナー・アンケートレポート」にて公表予定です。
ある企業(事業)自体に企業(事業)価値がないならば、その株式も社債も、その企業への融資も、投資価値がないはずです。株式か社債か融資かという選択の前に、投資対象としての企業価値に関する判断が先行するというのが、本来の投資のあり方であったはずです。
投資の機能の制度的分業化
金融の社会的機能の拡大に伴い、制度的分業化が進行し、株式や社債(債券一般)などの証券は資本市場を経由した資産運用業の対象となり、融資は銀行業の対象となりました。さらに、資産運用の中でも、株式と債券は別の対象というように専門性に応じた細分化が進みました。
資産の裏側にある企業の資金調達
株式、社債、融資などの資産は、裏からみれば、企業の資金調達活動から創出されるものです。資産の種類、銀行業と資産運用の区分を超えて、産業界への資金供給という金融の社会的機能としては、同じものです。
資金調達側の視点にたっていない金融の現状
資金調達を行う企業の立場からいえば、資金使途に適合した方法で必要額を調達できることが第一義的に重要であって、株式か社債か融資かというような手段の選択は、二次的な意味しかもちません。先に、株式や社債や融資ありと考えるのは、細分化した業界の都合にすぎません。
伝統的資金調達とアセットファイナンス
理論的には、企業の資金調達には、二つの基本形があります。伝統的な方法は、バランスシートの右側を使う方法、即ち債務や資本を増やす方法です。新しい潮流は、アセットファイナンスと呼ばれるもので、バランスシートの左側を使う方法、つまり、資産を売る(流動化する)ことによる調達です。
アセットファイナンスとファンド
アセットファイナンスによる資産売却は、資金調達が目的であることを明確にするために、売却ではなく流動化と呼ばれることが多いようです。流動化に際しては、ファンドの利用(即ちファンドへの資産売却)がよくみられます。
キャピタルストラクチャ
バランスシートの右側を使う伝統的方法でも、多様な株式と債務を組み合わせた調達、株式と債務(債券・債権)の多様な中間形態(英語で中二階の意味でメザニン)による調達が行われます。この組み合わせのことを資本構成、英語でキャピタルストラクチャといいます。キャピタルストラクチャのどこに投資するかというのが、資産選択の基本です。
アセットファイナンスのキャピタルストラクチャ
アセットファイアンスから生まれた不動産などの実物資産のファンドなどにも、多くの場合、組成方法の中にキャピタルストラクチャを工夫します。
キャピタルストラクチャの法律上の意味
企業(あるいは実物資産も同じですが)は事業活動を通じてキャッシュフローを生み出す仕組みです。キャピタルストラクチャは、そのキャッシュフローを投資家に配分する仕組みです。キキャピタルストラクチャの位置の違いは、その配分を受ける法律上の権利の優先劣後関係を意味します。
事業価値とキャピタルストラクチャ価値
事業価値は、ネット事業キャッシュフローの現在価値です。その配分の仕組みに過ぎないキャピタルストラクチャを工夫することによっては、事業価値は本質的には変り得ません。キャピタルストラクチャの多様化は、単なるリスクの細分化であり、投資家の選択肢の拡大を意味するにすぎません。
投資銀行業務の解体と再統合
企業金融の総合サービスとしての投資銀行業は、歴史的な分業化により解体へ向かい、資本市場を中心とした業務へ特化していきます。その後、自己勘定投資や資産流動化事業を通じて、解体した金融サービスを、再び新しい形に統合していきます。
規制を受けないファンドという投資銀行の登場
投資銀行の変容とともに、ファンド(実物資産やプライベートエクイティ等)という、規制の外で、企業金融の総合サービスを展開できる業態が、急激に拡大してきました。キャピタルストラクチャ全体をカバーできる投資です。ここに、再び、投資の原点への回帰が見られるのです。
ファンドの積極的な資産創出機能
企業再編等においては、ファンドが直接に企業等から株式やメザニンなどを引き受け、また融資等を実行します。ファンドが投資銀行機能を果たし、融資も行うという意味では、銀行機能すら果たしているのです。
次回、2012年 HC資産運用セミナー第7回は『実物資産投資とアセットファイナンスの意義と方法~資産を使った資金調達の仕組みと資本市場の構造変化~』です。
なお、本セミナーで実施致しました「セミナーテーマに関するアンケート」の結果に関しましては、
「HCセミナー・アンケートレポート」にて公表予定です。
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