2015年9月8日(火)開催 HC資産運用セミナーvol.093『オルタナティブとは何か:対象と方法』セミナーレポート
HCセミナー
■動画ダイジェスト
(オルタナティブとは)
「オルタナティブ」と言う言葉の使われ方は適当で、何でもオルタナティブとなってしまいますが、何かの代替、通常は株式や社債等の代替となる資金調達手段との意味合いで使われています。「一物一価」の原則の下では、融資で100億円、または社債で100億円あるいは、その他の方法で100億円調達しても、諸事情を勘案したコストは同じにならなくてはなりません。
年金に関する「フィデューシャリー・デューティー」についても、基金型では、忠実義務を基金の理事が負う形となっており、一方、規約型では、企業そのものが負う形となっていますが、企業がフィデューシャリーであり、加入員に対して責任を負っていることには何ら変わりがありません。
(資金調達とガバナンス)
オルタナティブ投資における最大分野である不動産について考えてみますと、今どきホテル業界で不動産を保有しているところは少なく、物流会社の物流拠点は汎用性、互換性が高い一方、製造業における工場には、概ね汎用性、一般性がありません。企業にとっても、自社のコアコンピテンスを考える中で、遊休不動産あるいは保有する必要のない資産の売却に至ることは自明で、「資金調達」と「コーポレートガバナンス」は裏表の関係となります。
オーナーや親会社が、子会社株式の売却・コアコンピテンスへの資源集中を考えた場合に、プライベートエクイティ(PE)ファンドがないと子会社株式の売却は困難であり、(本邦の)官に頼らざるを得ない状況には問題があると言わざるを得ません。大型案件について、米国のPEファンドでもなく、官でもなく、民間のPEファンドでファイナンスできるようにしなければなりません。 一方、コンベンショナルな調達が可能で、金融機関が安易な引受を行えば、ガバナンスは向上せず、企業は良くなりません。
東芝の問題について考えてみますと、海外で行われている様な資金調達方法が採られていれば、あんなことは起きる筈がありません。プロジェクト、案件単位で、内包利益を前提にしたファイナンススキームが組まれておらず、総合商社への与信と同様に「一本与信」となっていたことが問題の本質で、日本の金融が抱える問題であると言うことができます。リスクに応じた金利が適用され、融資を行う側の責任が明確となる一方、事業会社側でも、適用される金利が上昇することで、プロジェクト完成までの工期の短縮、稼働まで期間の短縮により、早く返済しようと言うインセンティブが働くと考えられます。言い換えれば、企業与信に関して銀行が仕事をしていないことで、銀行収益が圧迫されていることになります。
(オルタナティブの意義)
不動産の開発ファイナンスについて考えてみますと、不動産の開発業者が大家になったのでは、高いROEは維持されません。開発業者と不動産管理会社は別物であるべきです。通常、買い手を見つけて来ないとファイナンスは付きません。発電事業でも、売電価格が決まっていても買い手が決まっていないファイナンス・スキームでは、資金調達は出来ません。船舶も、買い手(海運会社)が決まっていないと、建造されません。一方、不動産は、多くの場合、一般的な借り手を前提にして開発が行われています。 不動産開発について、「初期開発」と「稼働後」を分離してファイナンスを付ける形で、開発期間の調達は高利・ハイリスク、資産が稼働してキャッシュフローが発生してからは、低利での調達と、オルタナティブな金融手法が採用されることで、リスクに見合ったリターンが得られ、投資家側にメリットのあるスキームとなります。
また、特殊な状況における資金需要や市場の非効率・機能不全から生じる産業金融は、金融リスクだけでなく法律リスク等をも取り込む形でのオルタナティブ・ファイナンスとなります。 企業経営者にとって時間は重要であり、3年掛けて売れるものを、70%の価格(1年10%のディスカウント)で即時売却することも経営判断であり、こういった企業行動が、オルタナティブの投資機会を作っています。 デフォルトしてしまったものは、信用リスクがゼロとなりますが、(債権の)回収率はゼロとはなりません。 時間も手間も掛かりますが、回収率が50%を下回る例は少ない一方、多くの場合、(債権者側には)早期に償却したいと言うインセンティブが働きます。ここにオルタナティブの投資機会が生じますが、外から買いに来る人と内部者である銀行とでは、情報の非対称が明らかです。こういった分野では、銀行を辞めた人や、銀行が使う弁護士が優越した買い手となり得ます。
機能不全に陥った市場に、流動性を供給することも、オルタナティブの重要な役割となっています。オルタナティブ投資は機会依存型で、常に世界を見渡すことが求められます。運用に際しては、知的「レバレッジ」が不可欠で、リターンが低い時に解約するのではなく、論理(的枠組み)が消滅した時に解約すべきです。
我が国においても、先端的分野を伸ばし「ベストプラクティス」が求められる流れとなっており、今年から来年に掛けて日本の金融は劇的に変化するとことが見込まれております。オルタナティブの分野でも、あるべき姿としての「プライベートエクイティ」やエネルギー分野でのディストレスト等に投資機会が生じ、投資対象となることが期待されます。
以上
(文責:佐藤)
当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。
■セミナーで実施したアンケートの集計結果
Q1 2014年4月、当時、一時的な資本不足に陥った北海道電力と九州電力は、日本政策投資銀行に対して、第三者割り当てにより、優先株式を発行しました。優先配当率は、北海道電力で、当初5年間3.8%、九州電力で、3.5%でした。この投資の機会について、どのようにお考えでしょうか。一番近いと思われるものを、一つだけ、お選びください。
1.原子力発電所の再稼働、電気料金の大幅引き上げ等、経営環境の急速な好転が予想されており、極めて魅力的な投資の機会である。
2.魅力的な機会ではあるが、3.8%、3.5%という優先配当率は、低すぎる。
3.優先株発行により、普通株式の評価が上昇すると思われ、むしろ、株式への投資のほうに、魅力があったはず。
4.優先株発行により、社債の評価が上昇すると思われ、むしろ、社債への投資のほうに、魅力があったはず。
5.その他
2.魅力的な機会ではあるが、3.8%、3.5%という優先配当率は、低すぎる。
3.優先株発行により、普通株式の評価が上昇すると思われ、むしろ、株式への投資のほうに、魅力があったはず。
4.優先株発行により、社債の評価が上昇すると思われ、むしろ、社債への投資のほうに、魅力があったはず。
5.その他
Q2 ベンチャーキャピタルは、全く新しいスタートアップの企業や創業間もない企業に投資しますが、そこでは、合理的な事業キャッシュフローの推計は困難であるはずです。さて、ベンチャーキャピタルは、責任ある投資家にとって、適格な投資対象であり得るのでしょうか。一番近いと思われるものを、一つだけ、お選びください。
1.事業キャッシュフローの推計は難しくても、事業モデルの妥当性や合理性は評価し得るのだから、適格な投資である。
2.ひとつひとつの案件ごとに、投資の適格性を議論することはできない。複数投資することで、統計的な制御がなり立つ限りでのみ、適格な投資である。
3.投資後の様々な経営支援活動(いわゆるハンズオン)によって、積極的にリスク管理できるという条件の下でのみ、適格な投資である。
4.創業直後の投資は、適格性を欠く。ある程度、事業キャッシュフローが読める段階に達した企業に、投資は限定すべきである。
5.その他
2.ひとつひとつの案件ごとに、投資の適格性を議論することはできない。複数投資することで、統計的な制御がなり立つ限りでのみ、適格な投資である。
3.投資後の様々な経営支援活動(いわゆるハンズオン)によって、積極的にリスク管理できるという条件の下でのみ、適格な投資である。
4.創業直後の投資は、適格性を欠く。ある程度、事業キャッシュフローが読める段階に達した企業に、投資は限定すべきである。
5.その他
Q3 「宝くじ」の発行は、実は、地方自治体の資金調達です。しかし、「宝くじ」は、購買者全体についての期待収益率が大幅マイナス(約-50%!)で確定するので、購入する経済合理性はありません。そのような「宝くじ」の発行で、宣伝広告までして、資金調達を行う自治体の行為は、なぜ正当化されるのでしょうか。一番近いと思われるものを、一つだけ、お選びください。
1.「庶民の夢として愛され、親しまれ、定着したファンをもつ」から(日本宝くじ協会ウェブサイトより)。
2.法律(当せん金付証票法)で定められているから。
3.金融商品取引法の適用がないから。
4.資金使途が、公共のものだから。
5.本来は、正当化され得ない。
6.その他
2.法律(当せん金付証票法)で定められているから。
3.金融商品取引法の適用がないから。
4.資金使途が、公共のものだから。
5.本来は、正当化され得ない。
6.その他
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