M&Aの入門書、参考書を探しておられる方向きには、最適の教科書だと思う。企業買収の買い手にとっても売り手にとっても参考となる記述が満載、またStrategic Buyer(事業会社)による買収にもFinancial Investor(PEファンド)による買収にも応用できる点が優れもの。辞書のように分厚くもなく、281ページは手ごろで、しかもExhibitとしてPurchase Agreementなどの契約書Sampleが入っている。英語で読むことになるが、日本語に翻訳されたものを読むより、M&Aの基本を原書で頭に叩き込む、英語で専門用語を身につけることが、後々きっと読者の役に立つだろう。内容はDeal Flowに沿っており、Due DiligenceからValuation、Financing、Post-Closing Challengeまで網羅しており、ほぼ万全。おもしろいのは「エゴのぶつかり合い」とか「社内外のPolitics」、「Nepotism(血縁者びいき)」など29のDeal Killersをあげていることで、うなずくものも多く、いかにDealをうまくClosingにつなげるか、筆者の思いが伝わってくる。このほかでは、同じ出版社から出ている「BUYOUT」(Rick Rickertsen著)もM&Aの教科書として秀逸である。
植田兼司氏のコラム「不透明な金融情勢下でのPrivate Equity Fundの戦略と実務」はこちら
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この本を紹介した人
植田 兼司
代表取締役CEOいわかぜキャピタル株式会社
1952年生まれ。1974年3月関西学院大学経済学部卒業。同年4月東京海上火災保険に入社、25年間資産運用部門にてグローバル運用のヘッドを務めるなど国内外の投融資全般に携わる。1999年よりRipplewood Japanの創業メンバーとして、我が国草創期のPEファンドビジネスに参画、2002年よりマネージング・ディレクター、2005年より2007年11月までRHJ International Japan(旧リップルウッド)の代表取締役を務めた。2008年2月に独立して、いわかぜキャピタル(株)を立ち上げ、同年8月にPE投資をスタートし今日にいたる。2001年~2009年、東洋大学経済学部講師(金融リスク管理論)。著書に「M&A Q&A」(1987年・六法出版、共著)、「21世紀・日本の金融産業革命」(1999年・東洋経済、共著)がある。