労働法トークライブ

労働法トークライブ

著者 森戸 英幸、小西 康之
出版社 株式会社有斐閣
発行日 2020/7/10
 労働法は働く人すべてにかかわる法律ではあるものの、小難しく、取っ付き難い印象が私にはあります。とはいえ、社会人になってから10年以上にわたり雇用業務に携わる中で、当然、労働基準法をはじめとする労働法に触れてきました。といっても全ての法律の条文を序文から読み通したことはなく、実際に事象発生の際に、或いは普段のふとしたタイミングで、「あれ、大丈夫かな?」、「まさか法に反していないよね?」と調べるのですが、これが、なかなか解釈が難しい。今回、そんな私がこの本を読んでみました。

 本書は労働法を専門に研究されている慶應義塾大学法科大学院・森戸教授と明治大学法学部・小西教授、二人のトークにて繰り広げられていきます。前説で、対談ではなくトーク『ライブ』であることが強調され、関西弁や時には軽いジョーク、プライベートな小話が挟まれ、楽しい雰囲気でトークが進みます。

 ライブ感を味わうためにと、前説でSetlist(目次)をスキップし読み進めることを強く推奨しています。
なので、ここでの紹介も10個のトピックスについての具体的なお話は敢えて控えさせていただきますが、各トピックス冒頭に、いつ何時、同じような現場に居合わせてしまうかもしれないという、ありがちなCase(設例)が挙げられています。控えると書きつつも、一つだけ、最初のCaseの一部をネタバレさせちゃうと、「ある会社の社長が自分と合わないからとB型は採用しないと決め、人事担当者に面接で直接聞けと指示」、さて、皆さんどう思いますか?これは違法ですか?・・・私は私なりに唸って考えることから始まりました。そして、過去の判例も紹介されつつトークが繰り広げられ、労働法をどう解釈して、どのように判断していくのか、Answer(解答)へと導かれます。

 私もSetlistは飛ばして読み進めました。でも、見るなと言われれば、見たくなるのが心情、次はどんなCaseが?と、知りたくなるのを途中、ぐっと堪えました(笑)
 改めて振り返れば、最近、報道で目にするような話題が並び、「えっ、そうなの・・・本当に・・・そうか・・・奥深い・・・」など、分かっていたようで知らなかったのだと、正に本書の策略!?通り、本書(著者)へツッコミ、頷きながら楽しく読み終えました。

 労働法は働く人のためにあり、働く人を苦しめたり、困らせたりするものではないということ、皆が自らの能力を活かして社会を動かしていく、そのためのものであるということ。人の能力も考え方も人それぞれ、個によって違う。法律を読み明かす前に、個々それぞれが違うということをよく認識して、どうあることが、働く人の最善なのかを考えることが重要だと考えさせられました。

 ぜひ、私のように法の条文ページをめくるのはちょっと難解だと感じている方、そして、労働法について関心を持ち勉強しようと思っている人やすでに勉強している人、経営者の方、そして何より現場で働く労働者の方々、まずは労働法に触れる一つの導入として、読んでみてはいかがでしょうか。読むというよりは、その場で聞いているような感覚で進められる一冊です。

この本を紹介した人

森田 由香利

HCアセットマネジメント株式会社

2007年10月にHCアセットマネジメント株式会社に業務経験者として入社。以降も総務人事を中心に従事。