企業・投資家・証券アナリスト 価値向上のための対話

企業・投資家・証券アナリスト 価値向上のための対話

著者 日本証券アナリスト協会 (編集)
出版社 日本経済新聞出版社
発行日 2017/6/7
 AI(人工知能)の発達により、証券アナリストの仕事がAIやコンピューターに代替されるのではと思ったことはありませんか?これに答えるためには、そもそも、証券アナリストの真の役割は何かについて、深く考え理解しなければなりません。

 本書では、様々な証券アナリストが自身の経験談を語る中で、証券アナリストの今までと今後の役割の違いを示しながら、この職業のあるべき姿について読者と一緒に考えていきます。また、証券アナリストの考えを述べている他、常に証券アナリストと対話している企業サイドの考えも綴られており、様々な角度から本職業のあるべき姿を探求しています。

 「証券アナリスト」とひと口に言っても、所属機関によってその立場は異なります。当然、仕事内容や求められる能力も異なってきます。よく知られている証券アナリストの仕事は、個別企業や経済、社会環境の調査をし、それを分析、評価して顧客に情報を提供することでしょう。しかし、それはあくまでこの職業に対する表面的な理解で、アナリストの真の役割はより深いものです。例えば、個別企業の調査という仕事は、ただ単に企業より開示された情報を分析するだけでなく、様々な人とコミュニケーションを取り、日常生活で見える現象など多様な角度から情報を検証する必要があります。

 また、従来の証券アナリストの責任とは、上述通りに情報を入手、検証、分析して最後に投資家にとって参考価値がある情報を発信することでした。しかし、今後はそれだけでは足らず、アナリストは自分の専門としている業界、例えば、テクノロジー、医薬やエネルギーなどの発展に責任を持ち、その業界に新たな進展をもたらすために企業と対話、議論することが必要です。つまり、今までは第三者の立場で業界の考察や分析を行ったのに対して、今後は当事者意識を持ち、更に業界の発展にエンゲージする姿勢が重要になってきます。

 このように、証券アナリストの仕事は、一見AIでも代替できそうな単純な仕事と捉えられるかもしれませんが、実はアナリスト自身の鋭い観察力、高度な情報読み取り能力、そして、専門業界の発展の貢献に繋ぐ行動する力が求められます。これが、AIが証券アナリストの代替をできない理由です。

 私が本書を読んで一番に思ったことは、金融業界に興味がある学生、証券アナリストの仕事を目指している方、もしくは金融業界に就職したばかりの方にこの本をオススメしたい、ということです。なぜかとういうと、本書はこの業界や職業に長く勤めている方々の長年の経験や知恵を対話形式でサマライズしているものであり、その内容を理解すれば、皆さんは自分が目指している世界はどういうところであるか、この仕事はどのようなものなのか、この業界は今後、どのような変革が起きるのかについて、更に深く理解できると思うからです。

この本を紹介した人

Tee XinYee

HCアセットマネジメント株式会社

2020年にHCアセットマネジメント株式会社に新卒で入社。 現在はポートフォリオマネージャーのサポートに従事。 昭和女子大学グローバルビジネス学部卒業。