行動経済学とは、購買者の心理を利用して、いかにして買わせるか。そういった学問であると思っていました。
本書を読んで、行動経済学とは、どのようにして顧客からの信頼を得て、納得して意思決定をしてもらうか、そんな学問であると感じました。
経済活動の様々な場面で、人間は非合理的な意思決定、行動をとってしまいますが、それはなぜでしょうか。
脳の中で「知覚」、「感情」、「直観」といったことにより最初に動かされるシステムを「システム1」と呼び、これは努力しなくても、自動的に素早く立ち上がってくれます。
一方、もうひとつの部分は分析や推論といった脳の活動に伴って動くもので、「システム2」と呼ばれます。これの立ち上げには労力が必要で、集中してコントロールしていないと動かない、しかもゆっくりとしか立ち上がらないという特徴があります。
人は、「システム1」によって判断し、「システム2」に至る前に意思決定しがちなため、非合理的な意思決定をとってしまうというものです。本書では具体的な事例が6ケース、取り上げられています。
印象に残ったのは毎月分配型投資信託をケースに取り上げた事例です。「毎月分配型」、「年率20%」など、とても魅力的な語句を並べて、顧客のシステム1に働きかけるような商品パンフレットが例として掲載されていました。
私はこの業界に入ってから、分配型投資信託の特徴について知りました。知らなければ、話上手な営業マンに、魅力的な語句を並べられ、おすすめですよ。と言われれば、システム2を立ち上げることなく、購買していたのではないかと思います。
手数料稼ぎを目的に、あえて、システム1に頼った、システム2を立ち上がらせないためのセールスが積極的に行われていたとすると、残念な気持ちになりました。
一方で、システム1を排除しきれないと思った事例もあります。J.C.ペニーのフェア・アンド・スクエア戦略では、年に590あったバーゲンセールを3種類に簡素化、最初に目にする価格が正しい価格だ。という、顧客に最初から誠実な価格を提供するという戦略でした。
この戦略を見たとき、自分はどうだろう。楽しく買い物するために、ここに定期的に訪れるだろうかということを考えました。自身でも経験がありますが、セールで、元値の50%オフで購入できた。というお得感はとても大きな効用であり、戦利品を手に入れたような楽しさがあります。「ここでは、いつでも、正当な価格で提供していますよ。」と言われても、それを素直に受け入れるのは難しいかと思いました。
このように、システム1を完全に排除することはできません。では、どのようにしてシステム2を立ち上がらせるか。本書では「システム1をほぐす」というワードが使用されています。
本書では6つのケースを元に、どのようにシステム1をほぐしていくのが良いか、講義形式で書かれています。各ケースの冒頭には、クイズが設けられていますので、考え、理解しながら読み進めることができます。
最後に、本書からの問いかけで、私が特に考えたのは、経営方針として、どちらが望ましいか。という問いです。
①顧客からの需要があるうちは、それが例え非合理的なものだとわかっていても提供する
②非合理的な選択をしないよう、あらかじめシステム1を排除する
どちらが正解とも言えないですが、考え方として、後者のほうを支持したいと思いました。顧客に合理的な購買活動をしてほしいという想いが見えるからです。
では、その想いをどのように実現するのか。そんな想いがある方には特に読んでほしい一冊です。
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経済活動の様々な場面で、人間は非合理的な意思決定、行動をとってしまいますが、それはなぜでしょうか。
脳の中で「知覚」、「感情」、「直観」といったことにより最初に動かされるシステムを「システム1」と呼び、これは努力しなくても、自動的に素早く立ち上がってくれます。
一方、もうひとつの部分は分析や推論といった脳の活動に伴って動くもので、「システム2」と呼ばれます。これの立ち上げには労力が必要で、集中してコントロールしていないと動かない、しかもゆっくりとしか立ち上がらないという特徴があります。
人は、「システム1」によって判断し、「システム2」に至る前に意思決定しがちなため、非合理的な意思決定をとってしまうというものです。本書では具体的な事例が6ケース、取り上げられています。
印象に残ったのは毎月分配型投資信託をケースに取り上げた事例です。「毎月分配型」、「年率20%」など、とても魅力的な語句を並べて、顧客のシステム1に働きかけるような商品パンフレットが例として掲載されていました。
私はこの業界に入ってから、分配型投資信託の特徴について知りました。知らなければ、話上手な営業マンに、魅力的な語句を並べられ、おすすめですよ。と言われれば、システム2を立ち上げることなく、購買していたのではないかと思います。
手数料稼ぎを目的に、あえて、システム1に頼った、システム2を立ち上がらせないためのセールスが積極的に行われていたとすると、残念な気持ちになりました。
一方で、システム1を排除しきれないと思った事例もあります。J.C.ペニーのフェア・アンド・スクエア戦略では、年に590あったバーゲンセールを3種類に簡素化、最初に目にする価格が正しい価格だ。という、顧客に最初から誠実な価格を提供するという戦略でした。
この戦略を見たとき、自分はどうだろう。楽しく買い物するために、ここに定期的に訪れるだろうかということを考えました。自身でも経験がありますが、セールで、元値の50%オフで購入できた。というお得感はとても大きな効用であり、戦利品を手に入れたような楽しさがあります。「ここでは、いつでも、正当な価格で提供していますよ。」と言われても、それを素直に受け入れるのは難しいかと思いました。
このように、システム1を完全に排除することはできません。では、どのようにしてシステム2を立ち上がらせるか。本書では「システム1をほぐす」というワードが使用されています。
本書では6つのケースを元に、どのようにシステム1をほぐしていくのが良いか、講義形式で書かれています。各ケースの冒頭には、クイズが設けられていますので、考え、理解しながら読み進めることができます。
最後に、本書からの問いかけで、私が特に考えたのは、経営方針として、どちらが望ましいか。という問いです。
①顧客からの需要があるうちは、それが例え非合理的なものだとわかっていても提供する
②非合理的な選択をしないよう、あらかじめシステム1を排除する
どちらが正解とも言えないですが、考え方として、後者のほうを支持したいと思いました。顧客に合理的な購買活動をしてほしいという想いが見えるからです。
では、その想いをどのように実現するのか。そんな想いがある方には特に読んでほしい一冊です。
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