物価を考える : デフレの謎、インフレの謎

　『物価とは何か』や『世界インフレの謎』で注目を集めた物価研究の第一人者・渡辺努氏が、日本のデフレとインフレの謎に迫る一冊です。

　なぜ日本だけが長期デフレに陥ったのか？ インフレは本当に恐れるべきなのか？ こうした疑問に対し、歴史的視点とデータ分析を交えながら解説します。日本経済の現状を理解するための基礎知識を提供し、金融政策や財政政策の効果についても考察します。経済学の知識がない読者にも分かりやすく、経済の仕組みを学びたい人に最適な入門書です。

　特に印象的なのは、第四章で日本の慢性デフレの「悪」を明快に示している点です。日本では物価や賃金の据え置きが当然視され、変化のない現状維持が快適とされてきましたが、2022年に突如訪れたインフレがその平穏を揺るがし、人々に恐怖をもたらしました。デフレの弊害も改めて浮き彫りとなり、日本経済の構造的な問題を見直す契機ともなりました。

　本書は、こうした変化の背景を読み解き、今後インフレが進む中で日本経済がどうあるべきかを考えるうえで示唆に富む一冊です。