エンゲイジメント
2018/05/17更新エンゲイジメントとは、株式投資についていえば、株主として経営者に何らかの積極的な働きかけを行うことであり、目的はガバナンスの改善である。機関投資家の株式投資については、その社会的責任を前提として、エンゲイジメントが義務として求められているわけであるが、ガバナンス改善については、本来の銘柄選択のほうが強力で有効であると思われる。しかしながら、機関投資家の場合、資金の肥大化にともなって、インデクス運用に代表されるように、事実上、市場全体に広く分散して投資せざるを得なくなっており、本来の銘柄選択の効果が機能しなくなっている。故に、市場原理の補完としてエンゲイジメントが必要だとする見解が支配的となるわけである。要点は、株主の地位は弱いものだから、投資先の企業のガバナンスの保証なくしては、投資家の利益を守れないということ、投資家の利益を守れなければ投資価値は全くないということ、ここに尽きる。上場企業については、ガバナンスのリスクを許容できる銘柄にのみ投資する、この原則は変更し得ないが、ガバナンスのリスクがエンゲイジメントによって管理可能だと判断されることも少なくないので、エンゲイジメントの意義は十分に認められるべきである。それでも、上場企業のすべてに投資価値を認めることなど全く不可能である。日本の資本市場は極めて未成熟な段階にあり、事実上、上場株式市場だけに限られているので、エンゲイジメントが重視されるのだが、ガバナンスのリスクを管理可能にする株式以外の市場機能の高度化を図り、そうした新たな市場が拡大することで結果的に上場株式市場が活性化してくることが必要である。