河西様がお持ちの投資哲学と運用の特色についてお聞かせください。
経済・社会や市場の構造の変化に伴う収益機会をいかに捉えていくかが運用のパフォーマンスへの影響が大きいと考えます。そのためには、何がどう変わろうとしているのか、なるべく本質に近い部分を簡単に掴むことが出来るように、判断材料を収集するとともに、一生懸命(一人で、あるいはチームで)考えるということでしょう。変化は大きなものもありますし、小さな場合もありますが、行動を起こす(投資する)際は100人のうちの最初の5人になる必要はなく(むしろ多くの場合精神衛生上ならないほうがよい?)、出来れば30番目くらいまでに入ることが肝要です。逆に70番目から後にはならないように気をつけなくてはいけません。
今注目している投資機会について教えて頂けますか。
月並みではありますが、アジアを中心とする新興市場は長いタームで取り組める投資機会だと思います。経済が“若い”だけに、金融ショックからの回復も一番早く、足元はすでに一服感も一部出てきているのですが、5年、10年といった中長期で見たときに世界経済の主役として成長するポテンシャルに投資機会は多いと思います。あとは、過度にリスクを取れなくなっている投資家から割安に放置されている市場の例としてクレジット市場がありました。夏以降、スプレッドが大幅に縮小し、魅力的な状況はほぼ解消しましたが、一部のセクターはまだ魅力的なほか、また売り込まれる局面もあるかもしれませんので、その場合には魅力的な投資機会になると思われます。
また、世界中から見放されている日本株なんかも、そろそろいい投資対象かもしれません。
運用の仕事に携わろうと思われたきっかけについてお聞かせください。
理系でしたが手に職がなかったので、あまり選り好みが出来たわけではありません。運用の仕事は、いろいろ知らないことが(給料をもらいながら)学べるというのが魅力でした。
運用を独立した事業に再編された先駆者として、今後、目指していきたい方向性について教えてください。
“独立した事業に再編された先駆者”というのは大袈裟ですが、社会人としてのキャリアが日本での資産運用ビジネスの発展期にちょうど重なったということはあります。もともと欧米(アングロアメリカンな)ビジネスでしたが、自動車産業の例ではありませんが、製造業でなしえたように運用ビジネスでも日本のやり方の良さを持ちながら、グローバルに伍していける事業にしたいと思っています。
投資に関するお奨めの書籍を1冊ご紹介頂けますでしょうか。
すべての経済はバブルに通じる(小幡 績)実は、投資関係の本はほとんど読んだことがないのでこの質問は困っています。
特にお奨めというわけではないのですが、最近目を通した本で面白かったひとつです。昔から(自分以外の)人間の行動心理を投資判断に反映させることは行われてきており、最近はBehavioral Financeという分野として話題になっています。この本もそういった視点での示唆を与えるものとして、参考になると思います。
主に業務に関する情報収集の為に、毎日チェックされている媒体(新聞・雑誌・webサイト等)を 教えてください。
特別なものはありません。情報については、日経などの一般紙やインターネットでのニュース、市場や経済指標の動きの他、FT紙やアジアのニューズレター、政治リスクの分析機関からのニューズレターなど出来るだけ海外のメディアにも目を通すようにしています。あとは、実務家向けのジャーナル(Journal of Portfolio Managementなど)で、リサーチの動向を見ています。
インタビュー後記
世界経済における日本の役割を見極めつつ、成長分野を発掘していく原動力として、日本株運用の原点に思いを馳せつつ、資産運用の意義について改めて考えさせられました。インタビューは以上になります。
リスク・手数料などの重要事項に関するご説明