Income Research & Management
Jack Sommers氏・Bill O'Malley氏インタビュー

interviewer:橋本 あかね(HCアセットマネジメント㈱ 常務取締役 運用部長)
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お二人がお持ちの投資哲学とIncome Research & Management社の社名の由来、運用の特色についてお聞かせください。

ビル:私達はストレートフォワードな投手手法を用いています。十分な利益が上げられ、利益が減少すればリスクも軽減すると思われる場合に、高いリターンの可能性を持つ証券をポートフォリオに追加します。私達の投資の枠組みは、相対的バリューのある投資機会を求めて様々な投資適格セクターを見渡し、リスク・リターンのトレードオフ評価をすることです。私達はバリュー投資家です。自らの投資方針に信念を持っており、その方針が成果をもたらすのに必要とされる忍耐力もあります。

ジャック:つけ加えて言えば、私達はマクロ経済的な投資を当てにするようなことはしません。マクロ投資家は見極めの難しいトレンドや投資時期を予測することが必要です。マクロ戦略とは対照的に、私達は真のボトムアップ投資会社です。ビルが言ったようにバリュー投資家なのです。私達の強みは、市場の特定セクターを見つけ出し、これらのセクターを集中的に分析するという能力にこそあります。このような最善の考え方が私達のポートフォリオの重要な部分となるのです。投資バリューを見つけ出すのが、私達のクレジットリサーチの結果であれ、複雑なストラクチャーを理解する能力、あるいは取引時の魅力的な投資機会を把握する能力の結果であれ、一日の取引の終わりには、可能な限り最良の投資適格債のコンビネーションを作るよう努めております。


当社の社名は、ここIR&M社において私達がまさに行っている事業を表現したいという思いから命名されました。それは、お客様に利益(income)を提供し、債券分析の際には厳格なリサーチ(research)方法を遵守し、お客様のニーズに応えるポートフォリオ運用(management)を行うことです。「リサーチが我々のミドルネームである」という言葉を好んで使っております。1987年に父と私が会社を設立しました。単なる家族経営に留まらない長期的な会社にしたいと思ったので、自らの名字を会社名に使おうとは思いませんでした。IR&M社で働く100人によって創り出された文化が会社を差別化するカギであると信じています。社員全員が、自分達の努力がどのようにお客様の成果に貢献し、ひいては会社の成果に貢献しているかを認識できる協調環境を作り出すよう努めています。

今注目している投資機会について教えて頂けますか。

今注目している投資機会について教えて頂けますか。
ビル:私達は投資適格債、中小企業局(SBA)債、スーパーシニア級商業用不動産ローン担保証券(CMBS)を選好しています。全体的に景気が低迷している中、私達が債券保有している企業の多く――鉄道やIT産業などのセクターの市場リーダーですが――は良好な業績を上げています。企業はトップライン収益を増大させる一方で預金準備を積み増してバランスシートを強化しています。SBA債は米国政府の十分な信頼と信用に裏付けられていながら国債を上回るプレミアムの利回りで取引されており、国債利回りが歴史的低水準にある今、私達はそこに投資バリューを見出しています。CMBSはヘッドラインリスクやボラティリティを被りやすいのですが、スーパーシニア級トランシェは「money good」な(償還に問題が無い)状態を保てるクッション構造があるので、時価は予想されるボラティリティを織り込み済みの価格となっていると思います

ポートフォリオ・マネージャーになろうと思われたきっかけをお聞かせください。常に心がけていらっしゃること、また、しないと決めていらっしゃることはありますか。

ジャック:ビジネススクールに入ったときから、資産運用のバイサイドをやりたいと思っていました。一年間投資銀行業務を経験した後、債券のセルサイドのクオンツアナリストを一年間担当しました。この時に、債券業務は好きなのですが、より分析的な、そしてより大きな意思決定プロセスに関わる業務に携わりたいと思うようになりました。幸い父はバイサイドとセルサイド双方の業務経験があり、彼がバイサイドを好んでいた理由を知って、ポートフォリオ・マネージャーになろうと思うきっかけとなりました。

ビル:ジャックと同様に、私も仕事を初めてすぐにバイサイドをやりたいと思いました。これは望み得る最高の仕事であると申し上げたい。なぜなら、意思決定のすべての段階に関わることができるからです。アナリスト、トレーダー双方の立場で様々な債券を見る機会を得られます。この仕事はクォーターバックに似ています。ゲームプランを描き、チームを奮い立たせ、それから実行に移す。机上の議論を円滑に進め、十分に吟味された意思決定の合意に到達すれば大変喜ばしいことですし、その決定がお客様のより良い結果に結び付けば殊更嬉しく思います。

私達は、ジャックと私が先ほど申し上げた投資哲学に忠実であろうと努めています。常に冷静でいるよう心がけています。市場で得られる最上の位置を占めたいと思いますし、常に自分達のあらゆるトレードの反対サイドに注意を向けるようにしています。誰から買っているか、誰に売っているか、また、なぜ相手が取引を望んでいるかを考えることは、なぜ取引が魅力的であるかを理解する上で役立つことが多いのです。また、特定の債券に固執することは避けています。割高な債券を買おうとする者がいれば、私達は喜んで売ります。素晴らしい投資決定は最良の準備と的確な意思決定に基づく、というのが私達の意見です。

お客様の資産保全についてお聞かせください。

お客様の資産保全についてお聞かせください。
ジャック:最良の資産保全方法は、国債を買うなどリスクを全く取らないことですが、お客様は一般的に許容できるリスク水準の範囲内で得られる最高のリターンをお望みになります。それはまさに私どもの業務プロセスが意図していることです。私達は状況を判断した上でリスクを取ります。他の市場参加者に比べ不利だと思う場合や、優位に立つ手腕に欠けるリスクがあると分かった場合には、信用取引やストラクチャー投資は行いません。状況を見極めたいと思いますし十分利益が上げられる場合にはリスクを取りますが、お客様が私達に望まれる以上のリスクを取ることはしないでしょう。

ビル:リスク・マネジメント技術に加えて、私達はお客様のポートフォリオに適した債券を購入することでお客様の資産を守り、投資決定を行う際は常にお客様の立場に立って考えるようにしています。割安な債券を買い、割高な債券を売るようにしたいと思っています。それによって私達は真のバリュー投資家たり得るのです。

投資に関するお奨めの書籍をご紹介頂けますでしょうか。

ジャック:債券を選好される方はシドニー・ホーマー、マーチン・リーボヴィッツ著「Inside the Yield Book」(邦題:債券投資分析の基礎―利回り数理の解明)を読むとよいでしょう。複雑な債券用語云々以前にストレートな手法で債券の仕組みの基礎を説明しているからです。私も80年代半ばにこの本を読んで啓発されたという懐かしい思い出があります。マイケル・ルイス著「Liar’s Poker」(邦題:ライアーズ・ポーカー)もニューヨークのセルサイドの考え方や行動が分かる素晴らしい本です。もっとも初期のセキュリタイゼーションの頃とは時代は確実に変化していますが。ジム・ウェア、ジム・デスマー著「High Performing Investment Teams」は現在の仕事に非常に役立っています。この本は、どんな投資チームにも成功するのに欠かせない要素である投資文化といったものを扱うためにリーダーが利用できる様々な手段を描いています。私達は、分析時のカギとなる勤勉さを維持し、チームメイトを尊重し協調によって生み出される素晴らしい追求姿勢を大事にする一方で、長年に渡って投資プロセスに新しい才能や技術を導入してきたことを誇りにしています。

ビル:私がお奨めしたいのはジョン・トレイン著「The Money Masters」(邦題:ファンド・マネジャー)です。長年に渡り資金運用を行ってきた投資家の成功を収めた聡明な投資マインドを垣間見ることができます。バートン・マルキール著「A Random Walk Down Wall Street」(邦題:ウォール街のランダム・ウォーカー)は大変面白い本です。この本はアクティブ運用者が一貫してインデックスを上回ることはできないと論じています。私達は、株式についてはこの考えに大いに賛成しますが、債券については賛成できません。2008年はマネージャーがベンチマークをアウトパフォームする上で、この上ない機会を得られた年でした。熟練したマネージャーは、市場サイクルについての債券市場の非効率性を有効に活用してアルファ・リターン(超過収益)を生み出す手腕を証明したのです。2008年の状況と金融危機は確実にある種格好の材料を提供してくれました。このシックスシグマ的事件について私のお奨めを挙げるなら、アンドリュー・ソーキン著「Too Big to Fail」(邦題:リーマン・ショック・コンフィデンシャル)です。

毎日チェックされている媒体(新聞・雑誌・webサイト等)を教えてください。

毎日チェックされている媒体(新聞・雑誌・webサイト等)を教えてください。
ジャック:ウォール・ストリート・ジャーナルはいつも読んでいます。もっとも、私どもの投資チームでは電子版と昔ながらの方法のどちらで読むか世代によって分かれますが。米CFA協会のFinancial Analysts Journalも本来はより学究的な内容ですが示唆に富んだ記事が得られます。機関投資家には、Pensions and Investmentsが大規模機関投資家やソートリーダーの思惑を理解する重要な資料となります。IR&M社のスタッフが様々な情報源から得た有益な記事を寄せているインターネットサイトにも目を通しています。

ビル:私はバロンズをお奨めします。また、企業の会長挨拶を拾い読みするのもいいと思います。特に世界的に有名な投資家によるものはお奨めです。業界の主要トレンドや全般的な世界経済が分かることが多いのです。



インタビューは以上になります。




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