Fortress Investment Group
Thomas W. Pulley氏インタビュー

interviewer:橋本 あかね(HCアセットマネジメント㈱ 常務取締役 運用部長) photographs:佐藤 亘
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Pulley様がお持ちの投資哲学と、ローンを通じた日本の不動産、言い換えれば、不動産担保ローンの投資機会に注目された背景についてお聞かせください。

Pulley様がお持ちの投資哲学と、ローンを通じた日本の不動産、言い換えれば、不動産担保ローンの投資機会に注目された背景についてお聞かせください。
 日本への投資は、今から10 年以上も前から行っています。日本(特に東京)は、比較的低い空室率と、供給に自然な制限があることから、世界的にも有数な、恵まれた不動産投資環境だと思います。リーマンショック以降、マーケット・サイクルにおけるディストレス・フェーズに入りました。その中で、物件を取得したり、あるいは物件のキャッシュ・フローと残存価値を享受するためには、デットが最も適した手段であると考えています。デットを取得する際は、物件のキャッシュフロー及びバリューに対するコンサーバティブな評価が重要になります。東京の不動産マーケットは、低い空室率、比較的低水準の供給量、そして債権債務に関連する法律が整備されていることを踏まえると、このバリューの分析においてアドバンテージがあります。デットや資産を直接取得する際、我々はキャッシュ・フローを重視するという投資哲学を持っています。経済が停滞している現在では、ますますキャッシュ・フローが重要になります。物件価格が上がらなくても、あるいは裏付け資産の売却に時間がかかったとしても、それでも利益を出せるかどうかがポイントになります。他に魅力的なイールドを生み出す投資商品が少ないことからも、機関投資家はキャッシュフローを生み出す物件に対する投資を増やし続けると見ています。
 フォートレス・ジャパン・オポチュニティー・ファンド(以下、「FJOF」といいます。)の投資哲学は、フォートレスのデット投資、不動産評価、クレジット分析、複雑なストラクチャード・ファイナンス、アセット・マネジメントおよびパブリック・エクイティ市場におけるグローバルなノウハウを活用し、それに基づいてフォートレス・ジャパンの戦略を実行する、というものです。我々は、日本が今、金融機関が不動産投資に関連する資産を売却せざるを得ない状況にあり、また、銀行や投資銀行が、自らのバランスシートを健全化させるために、これら不動産投資資産の買い手から売り手に移行しつつあり、その結果として、これら不動産投資資産の価格が下落するフェーズに入っていると考えています。また、向こう数年間で2.9 兆円の日本のCMBS およびストラクチャード商品が満期を迎えると予想されており、その際、これらCMBS 等はデフォルトするか、条件緩和が必要になると見られています。こうした状況を背景として、フォートレスでは、実際の賃料や担保価値を考慮すると、相当程度ディスカウントされたプライシングが多く出現するだろうと見ています。その結果、FJOF にとっては、不動産ローンや不動産関連資産に対する魅力的な投資チャンスが出てくるものと思われます。

今注目している投資機会について教えてください。

今注目している投資機会について教えてください。
 引き続き、不動産および不動産関連のオポチュニティーを裏付けとしたリアル・デットの、魅力的な購入チャンスがあると考えています。ムーディーズによると、向こう3 年間で2.6 兆円のCMBS ローンが満了予定で、内リファイナンスされるのは26%程度に留まる、とのことです。
 我々は、このようなストラクチャーからローンを既に購入してあり、この分野で今後もさらにチャンスが増えてくるだろうと見ています。その理由としては、CMBS 債の満了が近づいており、リアライゼーションに対するプレッシャーが高まっている一方、スペシャル・サービサーはデフォルト時のローンのリアライズを遅らせて来た、という事実があります。 上記ムーディーズの数字は、日本のディストレス不動産デットについて、公開情報に基づき、広く一般的に認識されている数字です。しかしながら、我々は実際のディストレス・デットの水準はこの倍程度あるのではないか、と見ています。外資系、および国内銀行のバランスシートに乗っているローンや、その他のファンドおよびファイナンス・ストラクチャーに含まれるものを加えると、それぐらい行くのではないかと見ています。その一方、不動産特化型の企業やプロジェクトの内いくつかは、資本を必要としており、この点からも別のオポチュニティーが生まれると思っています。
 我々は、日本のビジネス・コミュニティーにおける「信頼に足るパートナー」としての評価を積み上げてきました。その結果、一緒に事業を行うパートナー、銀行、その他機関を既に確保しています。

ポートフォリオマネジャになろうと思われたきっかけをお聞かせください。

ポートフォリオマネジャになろうと思われたきっかけをお聞かせください。
 不動産およびデットへの投資は、未だにチャレンジングで、私にとって魅力あるものです。
 私がこの仕事を始めたのは、アメリカのS&L 危機の頃です。当時は、不動産不況の真っただ中で、我々はその状況下で不動産の評価を行っていました。最大の課題は、正しいバリューがいくらなのかを算出し、ビジネスプランを実行することです。顧客である様々な投資家(年金ファンドやその他の機関投資家)に対し、より良いリターンを生み出すよう努力するのも楽しみの一つです。

ポートフォリオマネジャとしての信念をお聞かせください。常に心がけていること、あるいは、しないと決めていらっしゃることはありますか?

ポートフォリオマネジャとしての信念をお聞かせください。常に心がけていること、あるいは、しないと決めていらっしゃることはありますか?
 ポートフォリオ・マネージャーとして、引き続き不動産およびデットのオポチュニスティックな案件にフォーカスし続けています。オポチュニスティックなポートフォリオ・マネージャーですから、偏見を持ってはいけません。また、安易に投資案件を見送ることも許されません。もしかしたら、クリエイティビティーと努力次第で発掘できる「宝石」が埋もれているかもしれませんから。フォートレスは、こうした難しそうな案件から、宝石を掘り出すことを最も得意とする会社の一つだと思います。我々は、ここ数年間日本で取得したローン・プールの多くで、これを実現して来ました。また、欧米でも継続的にこのような成果をあげ続けてきました。しかしながら、大きなリターンを得る可能性がある一方、投資元本を失うリスクがあるような、オプションのような賭けの要素が強い投資は、恐らく行わないだろうと思います。だからこそ、我々はコンサバ目のレバレッジ水準を維持し、ベース・ケースのリターンを重視し、アップサイドが狙える場合だけ、いくつかのアップサイドのシナリオを生み出すべく努力してきたわけです。

投資に関するお奨めの書籍とその理由を教えてください。

投資に関するお奨めの書籍とその理由を教えてください。
 最近読んだ本で、印象に残ったものが二冊あります。あのウォーレン・バフェット氏の伝記「スノーボール」と、もう一冊はマイケル・ルイスの「ビッグ・ショート(日本語版のタイトルは「世紀の空売り」」です。両方とも、最近のマーケットの歴史や、そこから学ぶべき点について書かれてあり、私の投資哲学をさらに後押ししてくれました。この二冊がおもしろいのは、互いに根本的に異なる投資アプローチを紹介している点です。バフェットの投資に対するアプローチの根本には、ファンダメンタルなバリューや、キャッシュフロー、そして参入障壁にフォーカスする、という点があります。バフェットは、強気一辺倒の60 年代、スタグフレーションの70年代、買収の時代の80 年代、そして過去20 年間のインターネットおよび住宅バブルという、数多くのマーケットサイクルを通じてこの投資アプローチを用いて、大きな成功を収めています。一方、マイケル・ルイスの本は、マーケットに極端なボラティリティーが存在した時期について書かれています。この時期には、過剰なレバレッジと複雑なストラクチャーによってグローバルな資産バブルが引き起こされ、後に崩壊しました。この時期に台頭したのはモメンタム投資家で、そのキャピタル・フローが資産価格に激しい変動をもたらしました。上げ基調のときに投資した投資家は多額の損を出した一方で、下げ基調のときにショートした投資家は巨額のリターンを得ました。
 我々のファンドでは、投資の原則として、持続可能なキャッシュフローと低レバレッジにフォーカスしています。バフェットが示す教訓から学ぶことができれば、マーケットでの投資タイミングを伺う必要がなくなります。実物資産によって裏付けられ、分散した投資ポートフォリオを持てば、市場の短期的な変動に影響されない、持久力・耐久性が得られることでしょう。

定期的にチェックされている媒体(新聞・雑誌・webサイト等)を教えてください。

定期的にチェックされている媒体(新聞・雑誌・webサイト等)を教えてください。
日常的に、例えば以下のソース(これだけではありませんが)からマーケット・データを入手しています:
・ 日経ビジネス
・ ブルームバーグ・ニュース
・ Nikkei Real Estate Market Report
・ 様々なリサーチ・レポートやウェブサイト(CB リチャード・エリス、三幸エステート、三鬼商事、ジョーンズ・ラング・ラサール、日本不動産研究所など)

インタビュー後記

インタビュー後記
 銀行規制強化で不動産金融の需給が逼迫するなか、フォートレス社の日本におけるご活動は、説得力あるファイナンス供与のあり方を示していま す。社会に不可欠な資金として、中核的な投資対象となっていくのでしょう。










インタビューは以上になります。


リスク・手数料などの重要事項に関するご説明