デクラレーションの投資哲学や社名の由来、運用の特色についてお聞かせ下さい。
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期限前償還に反応しやすい資産と弁済状況に反応しやすい資産を組み合わせることで、リスクに見合ったリターンを高めることができると考えています。レバレッジの使用には常々慎重に対応してきました。レバレッジを使用する戦略はほとんど無いのですが、証券化商品の流動性はいつでも枯渇する可能性があることに留意しています。個別証券について言えば、損失や期前償還の予測を間違えたとしても十分な安全弁のあるディスカウント価格で取引される証券を探します。50bpの追加利回りを追求しようとするよりは、個別銘柄を厳選しつつ、ポートフォリオレベルでボラティリティや損失のリスクを管理しようとしています。
Declaration Management & Research LLC(デクラレーション)は1989年に設立されました。SEC(米証券取引委員会)に登録しており、約85億ドルの資産をお預かりしています。マニュライフ・ファイナンシャル・コーポレーションの資産運用部門がマニュライフ・アセット・マネジメントで、約2,000億ドルの資産を2012年3月末時点で運用していますが、その傘下の一部門です。証券化商品を対象とする戦略を中心に運用していますが、20年以上住宅ローン担保証券や資産担保証券に投資し続けており、親会社や日米の機関投資家のみなさまにご投資頂いています。
証券化商品に投資したことのない平均的な投資家に対して、証券化商品の特長やその投資機会についてわかりやすくご説明ください。
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証券化市場は細分化されていて、リスク度合いによって、安定した低ボラティリティ資産からディストレスト証券まで存在していますが、同一銘柄のなかでもあり得ることなんです。投資目的の異なるあらゆる投資家が、証券化市場のサブセクターのなかで豊富な投資対象を見出すことができます。市場環境の変化に合わせて、ポートフォリオのリスク属性を上げたり下げたり、調整しやすいということでもあります。
証券化商品は複雑で、深みのある分析を行おうとすれば、原資産と証券構造に造詣が深くなければなりません。複雑であるために、多くの投資家にとっては情報の壁が高いことになりますし、この道の専門家にとっては超過収益の源泉がふんだんにあるということになります。こうした情報格差があるために、証券化商品の専門家は、コアやハイイールド、バンクローンのセクターに比べると少ないのが現状です。証券化商品は、適切に運用すればかなり大きなリスクプレミアムの恩恵を受けられる分野で、リスクプレミアムがどこから生じるかというと、クレジット、期限前償還の状況、流動性、格下げ方針、政府介入といった潜在的な外部要因などが挙げられます。
他の証券化商品戦略のマネジャーと比較した場合、デクラレーションにはどのような強みがあるとお考えでしょうか。
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どのようにしてお客様の資産保全を図るかお聞かせください。
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ポートフォリオレベルで管理するのは、投資対象を分散し、発行額や残存期間に制限をつけることのほか、リスクプレミアムが薄くなれば市場連動性の高い信用リスクの配分を引き下げるなど細やかな配分調整をしますし、買うタイミングは見極め、レバレッジは殆ど使いません。レバレッジを使用する戦略は限られています。有価証券レベルでは、原資産を分析する際に、個別ローンの情報に基づき延滞や損失、期限前償還の傾向を予測する計量モデルを活用します。また、モデルでは判断しきれないリスク、例えば債権回収会社の動向や政策動向などにも注意を払っています。出来る限り、そうした外部要因に起因する定量化できないリスクがある証券は避けています。徹底したシナリオ分析を実施しており、個別の有価証券について、ベースケースから多様なストレスケースまで期待リターンをシナリオ分析します。シニアクラスに注目しているのは、損失の可能性が低いことに加えて、満期まで担保の優先請求権が付与されているために、市場サイクルにかかわらず、比較的リスクリターンの属性が安定しているからです。
ポートフォリオマネジャーになろうと思われたきっかけをお聞かせください。常に心掛けていらっしゃること、あるいは、しないと決めていらっしゃることはありますか。
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ポートフォリオマネジャーとしては、お客様の長期的な目標を考えて運用することを念頭に置いています。お客様はこのポートフォリオに何を期待していて、どの程度のボラティリティを許容しているのか? 足元の市場見通しや運用方針を正しく伝えているだろうか? 私は決してお客様のリスク許容度や目標に合わない判断はしないつもりです。ことがうまくいかなければ商売として良いことありませんし、お客様にとっても何もプラスにもならないですよね。お客様との信頼関係はとても大切で、着実に築いていこうと考えています。
投資に関するお奨めの書籍はありますか。ある場合はその理由もお聞かせください。
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投資関連の調査をするにあたり、毎日チェックされている情報源を教えてください。また、「情報過多」をどのように適切に管理されているかについてもご説明ください。
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市場や経済に関する情報や意見は溢れかえっていますので、誰でも圧倒されてしまうでしょう。当然、ポートフォリオマネジャーは、効果的な情報処理の方法を工夫していかなければなりません。入って来るデータや意見に対しては、それが否定的な意見であっても肯定的な意見であってもですが、耳を傾けなければならず、一方で経験から培ってきた、いくつかの核となる原則は持っていなくてはなりません。この核となる原則には、経済や市場の見通しが反映されますし、ポートフォリオのリスクをどう管理していくかといった見解が含まれます。こうした原則があればこそ、新しい情報を的確に分析することが出来ますし、投資方針やポートフォリオ構成に何らか再考の必要がないか、判断することができるのだと思います。短中期的には、柔軟かつ細かに対応していくことを目指しつつ、長期的な経済見通しを形成しようとしています。
インタビュー後記
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原資産のローンの弁済状況を日々確認し、証券ストラクチャーの個々のトランチの値動きを日々確認するとは正に職人技。みなさま、極めて地道な分析の積み重ねこそが資産運用の本質である、ということを改めて実感されませんでしたか。
インタビューは以上になります。
リスク・手数料などの重要事項に関するご説明