御社の投資哲学および投資プロセスについて教えてください。
投資哲学は「ファンダメンタル、長期、コントラリアン」です。私どもは企業の本源的価値を重視する投資家で、投資機会を見出す際には、経営者と同じ目線で考えるようにしています。つまり、企業の本源的な価値に対して大幅に安い価格で取引されている企業の株式に投資したいと思っています。ここで企業の本源的な価値と言っているのは、賢明な経営者が当該企業の取得に支払うであろう価額のことを指しています。保有株を売却するのは、株価が企業の本源的な価値を反映する水準に戻った時で、さらに、ほかに魅力的な投資機会を見出せるときが理想です。
株価は最終的に企業の本源的価値を反映すると信じていますが、いつ実現するかはわかりませんので、常に長期的視点で投資を考えるようにしています。できる限り過去に遡ってデータ分析をすることで、複数の景気サイクルにおける企業の収益性や株価の正常範囲を判断します。株は3年から5年は保有する覚悟で投資します。もっと長く保有する場合もあります。そして、適正株価に近づくまで待ちます。
最後に、とても重要なことなのですが、私どもはコントラリアン投資家です。私どもの哲学を全うするには、企業としても投資家としても、コントラリアンであることが求められます。我々が最も投資したいと思う企業は、他の投資家が最も投資したくないと思う企業だったりします。ポートフォリオには、業績が悪化していたり、平均よりも悪いと一般的に見なされる企業、業種、国が入っています。過去、良い実績を上げてこられたのは、こうした独特のコントラリアン投資を貫いてきたためでしょう。
もちろん、コントラリアン投資を貫くということは、闇雲に逆張りをしたり、単純に他の投資家と異なる行動をとったりということではありません。株式市場は、大抵正しいのです。ですから、弊社が強みを持つ分野におけるベストアイディアに、いつか市場に認められると確信するアイディアに、資源を集中する必要があります。
今どこに投資機会を見出していらっしゃいますか。なぜグローバル株式が良いのでしょうか。
私どもはボトムアップで銘柄選択しますので、マクロ経済の状況やトップダウン分析に基づいて見通しを立てることはせず、1件1件企業を分析していきます。制約のないグローバルな視点に立つことで、個別企業分析と銘柄選択というオービスの強みを、投資機会があればですが、常に最も魅力度の高い案件に向けることができますし、同時に、割高な銘柄や市場を避けることもできるということです。ここ数年はとりわけ難しい環境でした。銘柄間のバリュエーションのばらつきは、ゆっくりですがようやく広がってきたように思います。他の条件が全て同じならば、銘柄間格差が大きいほど、銘柄選択は活きてきます。それから、銘柄を厳選したポートフォリオは、今日債券に比べれば魅力的だと思っています。30年間を超える上昇相場を経て、債券は割高に見えるので、割安な株式のポートフォリオの方がいいのではないかと思うんです。
なぜこの業界で働こうと思われたのでしょうか。
オービスは、お客様の長期的な資産形成をお手伝いをするために存在しています。資産は、選択肢が多様であればあるほど活きるわけで、オービスがお客様に素晴らしい収益をもたらすことが出来れば、人生を豊かにすることができるかもしれません。個人や家庭にとっては、より良い家を買えたり、良い教育を受けられたり、引退後の良い暮らしが出来たりすることでしょう。機関投資家にとっては、従業員のためにより良い退職金制度を提供することだったり、大学財団であれば、奨学金制度の拡充といったことです。私どもの努力が成果に結びつくとすれば、大勢の方々に貢献することになりますから、それが、この業界に働くことの意義だと思っています。もちろん、この仕事は短期的には実りをもたらせないかもしれません。投資家は長期予測をたてるに当たって、短期のトレンドを参照しがちだからです。私は、お客様のためには、長期的視点を維持することが何よりだと思っています。足元の市場環境で何が最大のリスクだと思いますか。
難しいご質問ですね。自信をもって言えるかどうかわかりませんが、お答えしてみましょう。個人的には、投資家が直面する最大のリスクは、どのような環境下であれ、資産を永久に失ってしまうことだと思っています。ゆえに、私どもは、ベンチマークや競合他社の成績を下回るリスクよりも、資産を永久に失うリスクを如何に回避するかを重視しています。現金のような低リスク資産、あるいは長期債のほうが当てはまるかもしれませんが、近年最大のバブル状態にあると思われます。株式市場のなかで比較的安全とみなされている分野、たとえば生活必需品セクター株も、人気が出て、高くなっているように思います。不確実性の高い環境のなかでは、刺激的な意見かもしれませんが、安全の対価が高すぎる場合は、危険とも言えるのではないかと思います。
信念をお聞かせください。常に心がけていること、あるいは、しないと決めていらっしゃることはありますか。
お客様が望まれるものではなく、必要とされているものを提供するように努めています。ITバブル期の経験が良い例えです。気持ちはわかりますが、お客様が望まれるもののなかに、相対的に秀でた成績というものがあって、1990年代後半、オービスの相対パフォーマンスはあまり良くありませんでした。情報・メディア・通信セクターの株価は正当化できないと判断しましたので、そのような株式に投資することで、お客様の資産を危険にさらす訳にはいかないと思っていました。バブルが加速するに連れ、既に高かった株価はさらに吊り上り、こうした銘柄を保有していた運用会社は良い成績を上げました。私どもはIT銘柄を保有せよと、お客様から強いプレッシャーを受けることになるのですが、保有しないことにした結果、三割を超えるお客様を失いました。最終的に、バブルが崩壊した時に私どもの見方の正しさが立証されたのですが、残念なことにその恩恵を受けられなかったお客様がたくさんいらしたわけで、それは悲劇でした。お客様の信頼と確信度を長期に積み上げていくことが、私どもにとって全てです。それがなければ、何も始まりません。運用は信用ビジネスであって、とても競争が激しいのです。かつて、大きな金額を預けたいとおっしゃる見込み客がいらっしゃいました。毎年着実に相対的に秀でた実績を期待してのことでした。長期では良い成績をあげることに自信はありましたが、期待通りに毎年好実績を上げていくことには責任を負えなかったので、お客様は驚かれましたが、投資は見合わせるようお伝えしました。
どのようにお客様の資産を保全していきますか?
投資の観点からは、割高な株式に投資しないようにしていきます。投資でおすすめの本はありますか?
Peter L Bernstein氏による「Against the Gods:The remarkable story of risk」をお勧めします。日常、チェックしている情報は何がありますか?
通常、 Financial Times、Wall Street Journal、The Economistに目を通しています。リスク・手数料などの重要事項に関するご説明