Q1. 貴社の投資哲学および投資プロセスについて教えてください。
元本保全を第一に考えています。フィクストインカム投資の特性として損益の出方が不均衡であり、貸し倒れを回避することで長期的なパフォーマンスに大きな良い影響を与えることができるので、ファンダメンタルな信用力の質に重点を置いています。また、財務状況が芳しくない時の補完的な返済原資として、長期の根源価値を踏まえながら、景気の循環を通して持続的にキャッシュフロー創出が可能な企業を探し、投資を行います。ファンダメンタルな信用分析によって、借主の返済能力に問題なしと判断された後は、レラティブバリュー追求の取引により良好なパフォーマンスを実現できるよう投資を行います。満期保有が前提の信用分析を行いますが、新規ローンとセカンダリーローンについては継続的に質およびトータルリターンの比較を行います。
Q2.足元のどこに投資機会を見出していらっしゃいますか。なぜ米国バンクローンが良いのでしょうか?
担保付シニアローンはフィクストインカムの中で最も魅力ある商品の一つと考えています。理由は以下の特性です。1.高い弁済順位と担保: ローンは資本構成の上位にあり、担保権を有します。その結果、歴史的にみてもデフォルト率は低く、仮に発生した場合でも回収率は高くなっています。
2.市場金利の上昇に強い: ローン金利はLIBORに連動しており、市場金利が上昇すると金利収入も増加します。一方で、固定金利のフィクストインカム商品は市場金利が上昇すると価格が下落します。
3.絶対比較でも高いリターン: 現在のローン利回りはLIBOR+465bpsです。40bpsの予想損失を差し引くと、約LIBOR+425bpsのネットリターンを実現できます。
4.相対価値も魅力的: 現在のローン利回はLIBOR+465bpsで、5%に近い水準です。一方、ハイイールド債の利回りは5%を若干上回る水準です。ローンとハイイールド債の利回り、クレジットスプレッドはほぼ同じ水準ですが、ローンの弁済優先順位、担保、金利上昇に対するヘッジ機能、絶対的な高い期待リターンなどを踏まえると、ハイイールド債の現在の利回りはデュレーションと追加的なクレジットリスクが十分に反映されていないと考えられます。
5.他資産クラスとの低い相関関係: 歴史的にローンは他の資産との相関関係が低く、ポートフォリオ分散の観点からも魅力的な資産と言えます。
米国のローン市場は世界最大の規模で流動性も高く、ポートフォリオ構築・管理のための様々な投資の選択肢があります。LBO、その他M&Aや借換え等による活発な新規発行(プライマリー市場)が投資機会を提供している一方で、セカンダリー市場での取引高も増えており、リスクを最大限に抑えながらリターンを最大化するためのアクティブ・ポートフォリオマネジメントが可能となるような流動性を備えています。
Q3. なぜこの業界に参入しようと思われたのですか?
ローンの利点は先ほど申し上げた通りです。デフォルトや価格変動の可能性を加味しても魅力的な収益期待のある商品なので、ポートフォリオへの組み入れは有益であると考えており、3i Debt Management U.S.の前身として、米国シニアローンに重点を置いた投資助言サービスを提供するための会社を2005年に設立しました。Q4. 足元の市場環境で何が最大のリスクだと思いますか?
現在、最も懸念しているのはローン条件がますます借主優位となりつつあることに伴うリスクです。2013年は新規ローン発行額を上回る資金がローン市場に流入しました。結果として、借主とファイナンシャルスポンサーは、より高いレバレッジ、より多額の追加借入枠の設定、返済条件の緩和といった有利な条件を交渉することが可能でした。このような環境で、更に慎重な信用リスク分析と選別的な投資が求められました。一方で、現在、マーケットの需給は均衡しており、借主がさらにアグレッシブな条件を引き出す余地が少ないことは良いことだと考えています。新規投資の分析では、借主よりも先に、借入額のレベルと株式投資家への配当支払能力に重点を置いた分析を続けて行きます。Q5. 信念をお聞かせください。常に心がけていること、あるいは、しないと決めていらっしゃることはありますか?
長期的にアウトパフォーマンスを実現するには、ファンダメンタルの信用リスクに着目するのが最良と考えています。目標としては、産業・経済が芳しくない状況にあっても、ローン返済義務を全うできる財務力のある企業に投資することで、元本保全を実現することです。過度の利回り追求は、リスクに見合うリターンを獲得できないことが多く、長期的にみれば成功することは稀だと思います。この傾向は、信用リスクの差が利回りに反映されない上昇相場の際は特に顕著です。経済情勢の悪化やデフォルト率上昇のタイミングを正確に予測するのは不可能ですが、信用力の低い企業への投資リターンは、信用力の高い企業への投資よりも低くなると考えています。Q6. お客様の資産を保全する最善策とは何でしょうか?
3i Debt Managementの前身となる会社を設立した2005年以来実行してきたことを継続することだと考えています。一義的には投資家の元本保全を最優先としたポートフォリオの構築です。投資資産の満期保有を前提に、保有期間中に経済情勢が悪化することを織り込んだ徹底したファンダメンタルを行うことです。積極的な運用で適切に分散されたポートフォリオを構築し、信用リスクを最小化しつつ銘柄厳選することで安定的な超過収益を追求していきます。Q7. 投資でおすすめの本はありますか?また、その理由をお聞かせください。
The Big Short (Michael Lewis著) - 本書は、2007年に始まったサブプライムローン市場の暴落と、少数の投資家グループが如何にしてそれに対する洞察力を持ち利用したか、について書かれています。投資家の思考プロセスは非常に興味深いものがありますが、市場関係者の大半が、なぜ市場暴落の兆候を見逃したのか、も同様に興味深いと思います。投資家の群集心理について考えさせられる本です。Security Analysis (Benjamin Graham、David Dodd著) ― 本書は、ファンダメンタル分析に基づく投資について記述されており、エクイティーとデットの投資家双方にとって有益です。バリュー投資のバイブルとも言われ、著者は企業行動と価値向上の要素について識見を与えてくれます。
Q8.どのような情報を日々チェックされていますか?
紙面とネット上での報道、市場価格に関する情報提供サービス、市場関係者の論評など、数多くの情報源を常にモニターしています。パフォーマンスが変動する可能性を示唆し、我々の投資命題に影響を及ぼす新たな情報が、これら様々な情報源から得られるからです。インタビューは以上になります。
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