スピリタス・インベストメント株式会社(業務閉鎖)
上田 比呂志氏インタビュー

interviewer:HCアセットマネジメント㈱ photographs:佐藤亘
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Q1. 御社の投資哲学および投資プロセスについて教えてください。

Q1. 御社の投資哲学および投資プロセスについて教えてください。
投資哲学:
 個別企業の株価上昇の源泉を業績伸長に求め、業績伸長の質・持続性を評価して長期保有可能な銘柄を厳選し、投資することで中長期的なリターンを追求して行きます。

投資プロセス:(下記のチャートをご参照ください。)
 時価総額の大小は問わず、全上場銘柄の中から中長期で保有できるグロース銘柄を厳選していきます。最初は候補銘柄を絞り込むための機械的な定量スクリーニングで、①予想成長EPS成長率、②ROE、③営業利益率、④PER、⑤PEG Ratio(④を①で割ったもの)を使って絞り込んで行きます。この5つは、成長の速度や質が高く、なるべく割安なものをスクリーニングするために考えた指標です。その中から自己資本比率10%未満の企業や異常値の影響などを排除し、さらにスクリーニングで絞り込んだ候補銘柄を実際に調査して組入銘柄を決定して行きます。言うまでもなく最終的なファンダメンタルズ分析が最も重要なプロセスになります。

Q2. 今どこに投資機会を見出していらっしゃいますか。なぜ貴社日本株戦略に魅力があると考えていらっしゃいますか。

Q2. 今どこに投資機会を見出していらっしゃいますか。なぜ貴社日本株戦略に魅力があると考えていらっしゃいますか。
 日本の株式市場をスタイルで見ると、直近数年間はグロース優位でしたが、20-30年の長期で見ればバリューファクターが優位の相場が長く続いてきました。弊社ではグロース銘柄を厳選して投資することで中長期的に市場をアウトパフォームすることが可能だと考えております。自分自身これまで約25年間グローススタイルで運用してきた経験もあり、少子高齢化が進み潜在成長率の低下が指摘される日本でも有望なグロース銘柄への投資機会は十分あると考えております。例えば現在のポートフォリオではサービスや小売セクターなどの内需セクターの銘柄も多く保有しております。日本全体でみれば、GDPの成長率も低下し、一見内需セクターは魅力がなさそうですが、日本の経済規模そのものは依然として世界3位の水準であり、それだけの規模があるマーケットでシェアを拡大することができれば成長の可能性は大きいと考えております。成長するホットな市場でシェアを拡大できれば成長ペースは最大になりますが、当然株式市場の注目度も高くなり株式の評価としては割高になる可能性があります。一方で成熟したあるいは漸減する市場であっても着実にシェアを上げることが出来る企業を発掘出来れば、市場の注目度がそれほど高くない中で割安に投資できる機会も出てくると考えております。一方で海外市場で着実に成長する企業ももちろん有望で、電機セクターや機械セクターで差別化された技術や製品を保有するグローバルニッチと呼ばれるような企業にも投資機会があると考えております。

Q3. なぜこの業界で働こうと思われたのでしょうか。

Q3. なぜこの業界で働こうと思われたのでしょうか。
 1988年4月からの2年間、ボストンのフィデリティ本社でのトレーニー経験が全ての出発点になっております。日本での株式投資の経験も全くない中でファンダメンタルズ分析に基づくボトムアップアプローチの基本から学ばせて頂き、その手法を日本株を投資対象にこれまで突き詰めて来ました。また投資スタイルについても一貫してグローススタイルで運用させて頂いて来ましたが、これもフィデリティ社での研修で最初に配属されたチームがピーター・リンチ氏が率いる「Earnings Growth」チームだったというのが大きかったと思います。そこで学ばせて頂いたグロース運用の醍醐味がその後の自分の運用スタイルに大きな影響を与えてくれたと思っております。

Q4. ポートフォリオ・マネジャーとしての信念をお聞かせください。常に心がけていること、あるいは、しないと決めていらっしゃることはありますか。

Q4. ポートフォリオ・マネジャーとしての信念をお聞かせください。常に心がけていること、あるいは、しないと決めていらっしゃることはありますか。
 足で稼ぐボトムアップアプローチを徹底して行う、ということに尽きます。現在の会社を立ち上げてからはそれまでのような社内の会議等が減って調査活動の自由度が増したこともあり、さらに企業調査のボリュームを上げております。スピリタスではこれまでの約7年間で4,000社以上、2016年は延べ1,000回以上の企業IR(説明会やスモールミーティングも含む)を通じて情報を収集しております。余談になりますが、自分で年間1,000回以上のIRをこなしてみて、フィデリティのピーター・リンチ氏が当時1兆4千億円のポートフォリオに約1,400銘柄を組入れて運用されていたのを思い出し、自分が1年かけても回りきれないくらいの銘柄数で運用していたんだと、あらためてその凄さを実感した次第です。企業調査の量を増やすことのメリットとしては、例えば、保有している企業とは全く関連がないと思われるような企業でもサプライチェーンの中で繋がっていたり、競合状況など、保有企業の調査に役立つポジティブ、ネガティブ両方の情報が入手出来たり、企業やその企業が属する業界の変化点に気付いたりすること等が挙げられます(弊社ではこれを運用シナプスと呼んでおります)。また、幅広く企業の調査をすることでトップダウンのマクロ分析とは異なる、ボトムアップの景況感が醸成されるというメリットもあります。もちろん効率的な調査活動のためにスクリーニング等である程度絞り込みはした上ではありますが、成長の可能性はいろいろな分野にあり、また時代と共に変化していくので、あまり先入観を持たずに出来るだけアンテナは広く持ちながら情報収集するように心がけています。
 しないようにこころがけていることは、自分で理解が出来ない銘柄には投資しない、ということです。例えばバイオ関連では1銘柄のみ投資しておりますが、まずバイオ関連の銘柄は出来るだけ数を多く回って、可能な限り個別企業の説明を聞き、その中で自分が納得出来た1銘柄のみ投資しました。逆に言えば、その銘柄を知らない人に対しても分かりやすく自分の言葉で説明出来るような銘柄に投資するということになります。

Q5. どのようにお客様の資産保全を図るかお聞かせください。

Q5. どのようにお客様の資産保全を図るかお聞かせください。
 銘柄選別の精度を高めることで個別銘柄の下落リスクを抑制し、ポートフォリオ全体で下値抵抗力を持たせ、ロングオンリーではありますが中長期的に絶対リターンを追求していきます。ポートフォリオの70%前後はニッチな市場で高収益性を保てているような銘柄で構築されており、そのような銘柄は市場の急落時などのショックに対しては相対的に底堅い特性を持つと考えております。実際、スピリタスを立ち上げて以降の運用でも、東日本大震災等のショック時にポートフォリオは下値抵抗力を示した経緯があります。

Q6. 投資に関するお奨めの書籍を1冊ご紹介頂けますでしょうか。

Q6. 投資に関するお奨めの書籍を1冊ご紹介頂けますでしょうか。
ボストンのフィデリティ社での研修時代に読んだ、
「One up on Wallstreet」 Peter Lynch
株で勝つ』 ピーター・リンチ著
が自分のベースになった本です。一般の投資家が心がけるべき株式投資の基本を分かりやすく解説した本で大変参考になりました。ピーター・リンチ氏は、ボストン時代に直接お会いして、ファンドマネジャーとしての心構えなどについてアドバイスを頂いた経験もあり、今でも尊敬して止まないファンドマネジャーです。

Q7. 主に業務に関する情報収集の為に、毎日チェックされている媒体(新聞・雑誌・webサイト等)を教えてください。

Q7. 主に業務に関する情報収集の為に、毎日チェックされている媒体(新聞・雑誌・webサイト等)を教えてください。
 毎日チェックということになれば日経新聞になります。
 弊社にとっては個別企業の調査が基本になりますので企業から入手出来る情報を重視しております。また日々発表される企業の業績チェックも重要な作業になります。







インタビューは以上になります。

企業プロフィール

 スピリタス・インベストメントは2010年2月に上田比呂志と落合良彦によって設立された日本株式を投資対象とする独立系、ブティック型投資助言会社です。日本株式グロース運用に特化し、2010年6月より、年金基金やファンド・ラップ向けの日本株投資助言を提供しています。
 同社の設立に携わった2人はともに、設立前はモルガン・スタンレー・アセット・マネジメント投信に従事しており、ポートフォリオ・マネージャーである上田比呂志は同社在籍時も通算し、9,000を超える企業調査経験と、25年超の日本株式グロース運用の経験を有しています。
 同社は投資助言業の登録を行い、一般社団法人日本投資顧問業協会の会員になっています。

戦略

 株価上昇の源泉は最終的には業績の成長にあると考えており、また成熟した日本市場においても成長企業の発掘は可能であると確信しています。豊富な経験と幅広い知識を通して、業績伸長のクオリティ及び持続可能性を評価し、長期保有が可能な銘柄に厳選投資します。
 具体的には以下の異なる2つのグロース・カテゴリーを重視しています。
(1) エマージング・グロース
企業年齢が比較的若く、売上/利益ともに急成長の過程にある企業。企業規模は小さく、ハイリスク・ハイリターン
成長性の高さに着目。リスク・オン時のパフォーマンス牽引役
(2) アーニングス・クオリティ
ニッチな市場で高いシェアを確保するなど、収益構造が健全で持続的な利益成長を達成している企業。企業規模は小さく、低ベータ、低リスク
成長性の確度に着目。下落相場時のアンカー役



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