TwentyFour Asset Management
Ben Hayward氏インタビュー

interviewer:HCアセットマネジメント㈱
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Q1.貴社の投資哲学および投資プロセスについて教えてください。

 当社は、投資家にとって最も価値を提供できると考える債券分野に特化しています。ABSはその一分野で、調査が十分でなく、また、理解されていない部分が多く残されているため、適切な調査や専門性を有していれば、それに見合った投資収益が見込めると考えています。
 投資のアプローチでは、調査を重視し、かつ十分に確信が持てるものに対して積極的に投資を行うために、当社では莫大な時間とリソース(人材や資金)を用いてデューデリジェンスを行います。発行体や債権回収業者、CLOマネジャーとのミーティングおよび取引の自社モデルに関する分析などが含まれます。当社は、欧州ABS全般に投資を行う数少ない運用会社なので、流動性や市場におけるレラティブバリューに対する重要な洞察を得ることのみならず、取引におけるストラクチャリングや値付けに対しても大きく関与することが可能だと考えています。

Q2.今どこに投資機会を見出していらっしゃいますか。なぜ貴社の戦略に魅力があると考えていらっしゃいますか。

Q2.今どこに投資機会を見出していらっしゃいますか。なぜ貴社の戦略に魅力があると考えていらっしゃいますか。
 2018年の終わりに向けて、グローバルなクレジット市場全般にスプレッドの拡大が見られたように、現在のABS市場には多くの魅力的な投資機会が存在すると考えています。
 昨年の11月から12月の市場変動の中、ABSのスプレッド縮小が始まった時点では、社債やレバレッジドローンのような戻りではありませんでした。この戻りの遅れは、2019年に入ってからの発行市場が活発ではないことが一因です。パッシブ型の投資状況を踏まえると、投資家は市場の方向性を見極めたいのだと考えられます。よって、ここ数年のレベルとの比較では、現時点でのスプレッドは十分に拡大していますが、今後、発行市場でより多くの取引が行われ、市場に方向性がもたらされるに従い、このレラティブバリューでみた投資機会は早急に減少していくと見ています。
 2019年を俯瞰すると、クレジットサイクルの終盤に近付くにつれ、投資家はより質の高い投資を追求していくと考えられます。このような傾向は既にCLO市場で散見されています。当社としては、より信用力の高い投資案件を注視し、流動性のある短期デュレーション資産に注力することなどの対応を行うことで、更なるスプレッド拡大へ備えています。
 なお、ECBの政策である資産購入プログラムにより、利回りが押し下げられた市場のうち、極度に魅力度合が落ちているユーロ建のConsumer ABSについては、現状の低目のアロケーションを維持する予定です。

Q3.なぜこの業界で働こうと思われたのでしょうか。

 当初は、ポートフォリオ・マネジャーになることは想定していませんでした。オルタナティブ運用会社のトレーニーとして、1年間オペレーション業務を経験した後、投資担当者となる機会があり、マクロ経済の見通しや市場のテクニカル要因およびレラティブバリューなどを踏まえたポートフォリオ構築や、個別ポジションの信用リスクに対する深い分析などが求められることに魅了されました。

Q4.ポートフォリオ・マネジャーとしての信念をお聞かせください。常に心がけていること、あるいは、しないと決めていらっしゃることはありますか。

Q4.ポートフォリオ・マネジャーとしての信念をお聞かせください。常に心がけていること、あるいは、しないと決めていらっしゃることはありますか。
 当社の最優先事項は投資家へ良好な収益率を提供することです。なお、明示はされていませんが、常時、元本保全に留意するという債券投資のルールにも留意しています。
 ABSのポートフォリオ・マネジャーとして、投資家に代わり、担保やストラクチャーおよび、全案件の発行体を精査することが、我々の責務と考えています。
 また、債券の価格上昇について検討する前に、当社では莫大な時間を使って、各取引案件について利用可能な個別ローンレベルでのデータを調査します。ABS担保プールの透明性から、当社にはリスクを正確にモデル化する能力があるとの強い確信を持っています。適切なデューデリジェンスには、期待に沿った収益や、満期時の元本償還を確かなものとするために、発行体や取引のストラクチャリングを行うマネジャーとの定期的なミーティングが含まれます。
 なお、当社では満期保有を基本方針としており、決して行わないのは、売り抜けることを念頭に置きながらの、短期価格上昇に期待する投資です。更に、ポートフォリオの流動性がビークルや投資家の要請事項に沿うようにすることも大切だと考えています。この点については、十分に留意していない運用マネジャーも散見されます。

Q5.どのようにお客様の資産保全を図るかお聞かせください。

 常に状況が悪化し得ると考える、ある意味、悲観的な見方を基本としているので、(リスクに対して厳格な見方をすることになり)個別ポジションを満期保有するという当社のアプローチの強化につながっています。この見方を投資プロセスの中核としてきたことで、倒産リスクを効果的に抑制してきました。
 また、個別案件における徹底したデューデリジェンスを行うことが、投資家の資産保全にとって最善の方法であると考えます。取引案件はローンプールに裏付けされており、また、個別ローンの情報が利用可能なことから、モデル化し収益率を追跡できるので、満期時の元本償還の可能性に確信を持つことができます。
 なお、当社のABSチームはセルサイドの豊富な経験を有しており、時価評価で下振れする一因となりうるような、短期のテクニカルな市場要因に対応しなければならない局面では、同業他社との違いが出ると考えています。
 投資家にとっての保護となり、資産自体に組み込まれている信用補完、損失対応準備金や倒産隔離などはABSの魅力的な特徴だと考えています。

Q6.投資に関するお奨めの書籍を1冊ご紹介頂けますでしょうか。(書籍の概要・感想・評価についてご記入下さい。)

Q6.投資に関するお奨めの書籍を1冊ご紹介頂けますでしょうか。(書籍の概要・感想・評価についてご記入下さい。)
 教科書的な書籍よりは、また、投資分野であっても担当分野セクターに関連するものよりも、その他分野の経験が得られるものが好みです。多くのすばらしい書籍がありますが、“When Genius Failed”や“Liars Poker”は特に好きな2冊です。最近では、“Bad Blood”(真に深度のあるデューデリジェンスの重要性を強調しており、私自身が高く評価するプロセスです)やWarren Buffetのエッセイ(投資家宛てレターを編集したもの)を非常に興味深く読みました。

Q7.主に業務に関する情報収集の為に、毎日チェックされている媒体(新聞・雑誌・webサイト等)を教えてください。

 ABSの専門家としては、主要な金融メディアのABSやCLO市場に関する記事を読むのはフラストレーションがたまることがあります。2008年の金融危機において、Securitisation(証券化)がどのような役割を果たしたのか、また、果たせなかったのかに関する理解不足が依然として存在しています。特に、危機を通じて元本損失を殆ど被らなかった欧州ABSに対する汚名は不公平だと考えています。
 挙げるとするならば、中央銀行から発行される貸付調査レポートを注意深く読みます。イングランド銀行の信用状況調査(Credit Conditions Survey)やその他関連業界誌です。これらはローンの収益率や、銀行その他貸付業者の動向の見通しについて、非常に重要な洞察を与えてくれます。
 また、市場の動向全般をとらえるために、Bloomberg, Financial Times, Wall Street JournalやReutersのInternational Financing Review, Global CapitalおよびStructured Credit Investorなど、より市場に特化したものを見ています。



インタビューは以上になります。

企業プロフィール

 TwentyFour Asset Managementはロンドン拠点の債券スペシャリストであり、Vontobel Groupの一員です。創業の2008年以来、債券市場における実績、専門性および革新性で欧州において確固たる評価を確立してきました。
 同社のサービスは、専門的な機関投資家向けに提供されています。提供するサービスにはオープンエンドやクローズドエンドのファンドおよび、個別マンデートに沿った運用が含まれ、特に、年金基金向けにカスタマイズされたものが多く含まれます。また、マルチセクター債券、Outcome Driven(絶対収益クレジットファンド・社債ファンドをカバー)およびABSの3チームが共同しつつ、ポートフォリオチームとして投資を行っています。
 同社の目標は、優れたリスク調整後収益率を投資家へ提供することであり、景気サイクル全体を通して元本保全に注力することです。また債券運用に特化しており、同社の全リソースおよび人員は、顧客に対して最前の結果をもたらすべく訓練されています。

戦略

 TwentyFourの投資適格ABS戦略は欧州ABS市場全般を投資の対象としています。資産クラスの優位性及び、長年に亘るチームの経験を活かして安定した魅力的な収益率の達成を目標としています。全体的な目標としては元本保全に注力しつつ、市場の金利レベルを超える魅力的なインカム収益を提供することです。

 当戦略は、より一般的な投資選択である投資適格国債や社債よりも、ABS自体に組み込まれている優位性を獲得できるように設計されています。ABSはこれらのセクターと比較すると、同レベルの格付けや満期であっても高い利回りになる傾向があります。また、実質的にほぼすべてが変動金利であることから、金利上昇局面においては、固定利付債券よりも価格変動が抑制されます。更にABSには、信用補完や損失対応準備金および法的な倒産隔離の仕組みなど、投資家保護となる特徴が内包されています。

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