ATLANTIC 日本株式・米国株式・欧州株式戦略 公開ミーティング要旨

日時: 9月2日(水) 14時-16時
場所: HC 5階会議室
マネジャ:山田 健一朗氏(シニア・エクイティ・アナリスト:NY在住)
HC: 横山、前田、柳井

[会社情報]
・ 創立者のアレキサンダー・ローパーズ(50歳)を中心とした運用チーム。同氏は以前、機械メーカーでM&Aを担当したことがある。その際に習得した産業セクターの知識を生かして、欧州の富裕層に米国株投資の機会を持ってもらいたいと思ったことがファンド設立の経緯である。
・ 93年から運用開始。フラッグシップは02年にクローズしている。欧州・アジア株運用は5年前から始めた。投資家から成功している米国株と同様な手法で欧州・アジアでも運用してみたらどうかと持ちかけられたことが発端である。会社としてはシングルストラテジーで、各ファンドは投資地域を絞ったラインナップとなっている。各ファンドにはゲートやロックアップの条項を設けていない。
・ 株式調査は米国4人、欧州4人、アジア5人。アジアのうち3人は東京にいる。トレーディング部門には3名在籍し、24時間体制を敷いている。
・ 3年前にSEC登録済みで、先日初めてのSEC監査が無事に終了した。
・ 最近コンサルの推薦により、日本の年金基金で米国株戦略が採用された。
・ これからアジア・エマージング株(中・印・韓・マレーシア等)のファンドを新たに立ち上げる予定。パートナーの自己資金で立ち上げ、軌道に乗ったので投資家を募ろうと考えている。
・ 顧客は地域では欧州・米国がそれぞれ半々で、日本は5%程度。また客層は1/3が富裕層で1/3が年金あるいは財団、15%がFOF、残りが役職員の自己資産である。

[日本株式・米国株式・欧州株式戦略情報]
・ 徹底的に割安銘柄を狙う超集中のコントラリアン戦略で、中核となる銘柄を数銘柄にまで絞り込む。経営層に会えることを重視し、企業の発行済株式の2%以上を保有する大株主になるが、流動性の観点から7%以上にはしない。安定的に利益を稼げる消耗品関係や設備関係の維持・整備に関する分野を好む。
・ PE的投資手法を公開株で行うのが基本コンセプトである。最大で発行済株式の7%を保有し、建設的な株主として経営陣に提言や意見を述べてバリューアップを図る。
・ 投資対象は時価総額では中型株に絞っている。時価総額が2兆円以上になると経営陣との対話が困難になり、1,000億円以下だと流動性に劣ることが理由。また主な投資対象セクターは、機械・食品・サービス・運輸といったいわゆるオールド・エコノミーに絞っている。したがって株式調査の人員にもこれらのセクター経験者が多い。特に技術の陳腐化が早い、訴訟リスクがある、政府の干渉がある、といった特徴をもつセクターやバランスシートが不透明な金融セクターへの投資は好まない。
・ 株式の組入れ基準は、FCF利回りで10%超、PERで10倍程度であり、FCF利回りが6-8%、PERで13-15倍程が売却の基準である。30銘柄程を組入れのウオッチ銘柄としており、この30銘柄は四半期毎で入替えを行う。これらのバリュエ-ションの基準は、ヒストリカルな水準推移を鑑みて決定した。バリュエーションを注視することはリスク管理でもある。
・ 投資期間は1-3年で、平均2年である。保有したい銘柄がないときには、ファンドの組入割合を60-70%まで下げることもある。
・ ロングショート戦略については、ポジションはショート50%、ロング110%を上限としている。ショートも基本的には個別銘柄であるが、インデックスを使用することもある。ショートは2-3週間での短期投資が多い。ロング・ショートそれぞれでαの獲得を狙っている。
・ 最近まではモーメンタムによる相場全体の上昇であったが、今後相場は正常化し、銘柄選択が有効な局面が始まると考えている。昨年の相場下落時には、割安であると思い買い続けたことを反省している。キャッシュ比率を上げるべきであった。

[Q&A]
Q1: より戦略を理解するために具体的な投資例を例示してください。
A1: ある機械株を例として説明する。その株は2回保有した。1回目は02年の秋で、PER10倍で保有し、株価が2倍(PERは15-6)となったところで売却した。続いて08年春にPER10-11となったので再度保有した。その後不要な米国の事業買収をしようとしたので反対の意見具申をし、幸いにも相手の拒否により事業買収は成功しなかった。事業買収の失敗後、相手方の株価が6ドルから50セントに急落したことを考えれば、買収に反対して正解だった。その後、その機械株はリーマンショックで一時株価が低迷したが、狙い通りに回復した時点で売却した。売却価格は買値と同じ程度であったが、その間のベンチマークの急落を考えれば相対的には投資は成功であった。

Q2: 投資先企業の経営者は意見具申を聞き入れるのか。
A2: 株主として上位10社に入っていれば、話をする機会を得ることが可能。正当な意見であれば、受け入れられる余地はある。

Q3: 中型株であれば、特に大量保有することもあり、売買時のマーケットインパクトが気になる。マーケットインパクトを回避しつつ流動性確保をするためには、どう工夫しているのか。
A3: 当該株の出来高の25%までしか1回の売買では実行しない。そのため時間をかけて売買する。特に売りでは少なくとも30日間で全買できるようにし、さらに望ましい水準として15日間を設定している。実際に昨年のリーマンショックによる解約でもマーケットインパクトを回避して売却できた。ただし昨年の経験から、月次の解約を15日前通知から30日前に替えた。また顧客は400以上と顧客分散はできている。

Q4: 企業の成長性は投資する上で加味するのか。
A4: 3期先の収益予想までしか評価対象としていない。それ以上先の予想は意味がないと考えている。何年も先の成長を織り込むというよりは、1年後の姿を基にしたバリュー投資。

Q5: 日本の政権交代の株価への影響をどう見ているか。
A5: 05年の再来という強気の意見が多い。特に原子力や教育のセクターの銘柄にはよいであろう。ただし完全なボトムアップであるため、会社としてマクロビューがあるわけではない。

Q6: 銘柄の売買の最終決定はどうしているのか。
A6: 創業者のローパーズ氏が最終決定を行う。

以上


留意事項
弊社の投資先、もしくは投資候補として注目度の高いマネジャに関する公開ミーティングを通じたご理解を今後の資産運用にお役立ていただくこと、および弊社へのご理解を深めていただくことによる投資一任契約の締結の勧誘を目的としており、特定の金融商品の募集・勧誘を行うものではありません。

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