2012/1/11開催 HC資産運用セミナーvol.049 セミナーレポート
HCセミナー
《 セミナーのまとめ 》
株式の投資対象としての根源的意義の再検討
最初から株式へ投資することを前提にしたうえで、資産配分の問題として、その組入れ比率を上げるか、下げるか、という議論をすることに、どれだけの意味があるのでしょうか。必要なことは、株式への投資の意義を本質的に再検討することではないでしょうか。
本来の事業投資としての株式投資
株式という「紙」に投資しているのではありません。株式を発行している企業の事業が生み出す事業キャッシュフローに投資しているのです。株式投資の根源は、事業投資です。投資対象としての株式の評価や銘柄選択が成り立つのは、その基礎になる事業の評価や選択が成り立つ限りにおいてです。
長期的な資金調達の手段としての株式発行と企業の成長戦略
株式は、そもそもが、企業が資金調達の手段として発行するものです。株式という資金調達方法には、定期的な利息の支払いや満期における弁済がないが故に、時間に拘束されない、という利点があります。それだけ、企業は、手取り資金を使って、企業の成長の基盤を築くための長期的な視点に立った設備投資等ができるのです。したがって、企業の成長志向がないところでは、株式による資金調達の必要もなく、株式投資も成り立たない、ということです。
キャピタルストラクチャにおける最下位としての株式
いわゆる資産の区分は、本源的に創出された事業キャッシュフローの分配に関する権利の優先劣後関係であり、キャピタルストラクチャ(資本構成)上の位置のことです。最上位が債権(券)であり、最下位の地位を占めるのが株式です。つまり、株式とは、投資家の権利の保護が一番小さな投資対象なのです。そのような株式に、なぜ投資できるのでしょうか。
株主の権利
株主の権利は、たかだか、①配当を受け取る権利、②議決権、③残余財産分配権、の三つしかありません。そのうち、事業キャッシュフローに参画する権利としての株式の経済的価値は、将来にわたる配当を受け取る権利に帰着します。
本源的投資価値としての配当
株式を所有することの本来的な意味は、将来にわたる配当を受け取る権利を手にいれることです。株価の上昇があり得るとしたら、それは、将来の配当の期待値が上昇することの結果です。
配当性向と内部留保の効率的再投資
企業経営にとって、今の利益の適正な部分を株主に配当することと同時に、将来の配当余力を大きくするために、即ち成長のために、内部留保した利益を効率的に再投資することが、課題なのです。成長とは、株主の立場からいえば、配当の成長のことです。
内部留保と資本の毀損の可能性
企業の本質として成長志向があります。しかし、成長のための内部留保は、配当性向を下げるだけでなく、留保資本の投資の非効率や失敗によって、資本を毀損する可能性を伴います。ここに、企業の経営責任の究極の姿があります。この点に関する経営への信頼がなければ、その企業の株式には投資できません。
事業キャッシュフローの源泉の厳選としての銘柄選択
事業投資という深みでの株式投資、つまり徹底した事業分析を行うという前提の投資では、そもそも、多数の銘柄を投資対象にできるはずもありません。対象に求められる厳格な条件が充足されない限り投資はあり得ず、厳格な条件を満たしたとき、満たした銘柄のみが、投資対象であり得るのです。
事業キャッシュフロー源泉に基づく分類と伝統的な表面的な分類
グローバル企業は、事業キャッシュフローの源泉が世界中に散らばっているという意味で、国籍がありません。理論的には、株式の分類は、上場地や業種や時価総額規模の問題ではなく、事業キャッシュフローの源泉の仕組みの特性によるべきです。
価値と価格と市場効率性
株式の価値は事業キャッシュフローの現在価値として算定されるものです。株式の価格は当然に価値を反映しますが、価値と価格は常時一致しているとは限りません。市場の効率性とは、その一致している度合いのことです。
投資家の主体的関与があって始めて市場の効率性が保証される
株式の価値判断に基づき、良いものを買い、悪いものを売る、という投資家の積極的関与(真のアクティブ運用です)があってこそ、市場の効率性が保証されます。その限りでのみ、労せずして効率的に分散された投資を実現するというインデクス運用が意味をもつのです。まともなアクティブ運用が機能しないとき、インデクス運用は意味をもちません。
価値と価格の差としてのバリュー(割安)とカタリスト
株式の価格が価値を下回っていることをバリュー(割安)といいます。市場原理では、その場合、価格が価値の方向へ動くことを予定しています。しかし、そのためには、何らかのきっかけが必要なのです。このきっかけのことを、英語ではカタリスト(触媒のこと)といいます。カタリストがないとき、結果として割安が割安のまま放置されることを、バリューの罠(バリュートラップ)といいます。なお、当然ですが、カタリストは、そもそもの価格が価値を下回る状況を作ったことの反転要因です。
配当重視の投資戦略
割安のままでは、何がいけないのでしょうか。割安なものは配当利回りが高い場合が多いでしょうし、下値硬直性も高いでしょう。高利回りを安定的に享受できるなら、それで十分なのではないでしょうか。割安の解消、即ち価格の相対的上昇は、あくまでも結果的に発生することが期待されるものであって、そのことが目的ではないはずです。
成長を放棄した企業の株式の意味と非公開化
理論的に、成長しない企業の株式の配当利回りは、社債金利を上回った状態で安定します。キャピタルストラクチャの下へいくほど、金利が高くなる理屈だからですし、配当性向が非常に高くなるはずだからです。しかし、そのような企業に上場の意味はないのです。非公開化もしくは被買収によって、市場から消えていくべきです。成長なきところ株式投資なし、です。
価値変動とリスク、価格変動とボラティリティ
価値は変動します。価値の毀損が真のリスクです。一方、価値変動と関係なく、価格は変動します。その振幅のことをボラティリティといいます。株式投資で真に問題としなければならないことは、価値の毀損としてのリスク、即ち、真の損失の可能性です。単なる価格の下落は、真の損失ではありません。
振幅が作り出す投資機会
株式投資の王道は、価値への投資です。しかし、株価の振幅そのものも、投資機会になり得ます。いわゆるヘッジファンド的な戦略の有効性、現金保有を認める運用など、自由な投資手法も検討しなくてはなりません。
事業価値と株式価値
事業価値とキャピタルストラクチャ(資本構成)の全体の価値とは、一致します(貸借対照表の原理)。事業価値を一定としても、キャピタルストラクチャの仕組みを変えることで、株式価値が変動する可能性があります。株式以外の資金調達の多様化と効率化によっては、株式価値を高めることもできるのです。
上位債権者の存在と適正なキャピタルストラクチャ
株式は、キャピタルストラクチャの最下位にある以上、株式と上位債権との比率が適正に保たれない限り、債権者の権利を守るためだけの役割に転落してしまうことに留意がいります。一方で、過大な自己資本は、資本利潤率の低下をもたらします。適正な債務比率は適正な自己資本比率のことですし、要は適正なキャピタルストラクチャのことです。ここで適正という意味は、まさに言葉の真の意味における適当(多からず少なからず)でなければなりません。
事業内容と資本構成に及ぶ株主の主体的な関与
良い事業をもつ企業は、良い企業です。良い企業は、適切な時期に適切な経営革新を行うことで、事業価値が企業価値に現れてくるような変革(キャピタルストラクチャの合理化や不採算事業の整理)や、事業価値を一層高めるような変革を行うはずです。企業の変革を促すような強い主張をもった投資、社会変革の視点に立脚した投資は、そのような自己変革に対して、建設的な助言として機能する、まさに変革の触媒(カタリスト)として機能するのではないでしょうか。
買えないものに値段はない
「被買収」の意味を徹底的に考え直さなければなりません。価値があるから手に入れたいのです。価値がないものは、いかに割安でも買収されない(そもそも、悪かろう、安かろうで、割安とはいわない)。割高でも買収されるような状況こそが、真の買収です。しかし、買収できない企業の株価には、値は付かないかもしれません。買えるものだけが投資対象です。
ESG(環境配慮、社会性、企業統治)の思想
環境負荷の高い企業経営、社会的費用の高い企業経営、創業家の支配的経営などは、何らかの社会的価値観の転換による、企業価値評価の変動にさらされています。ESGは、社会の価値の転換による企業価値評価の変動の可能性(リスク)を明らかにした上で、投資判断を行うものです。
最初から株式へ投資することを前提にしたうえで、資産配分の問題として、その組入れ比率を上げるか、下げるか、という議論をすることに、どれだけの意味があるのでしょうか。必要なことは、株式への投資の意義を本質的に再検討することではないでしょうか。
本来の事業投資としての株式投資
株式という「紙」に投資しているのではありません。株式を発行している企業の事業が生み出す事業キャッシュフローに投資しているのです。株式投資の根源は、事業投資です。投資対象としての株式の評価や銘柄選択が成り立つのは、その基礎になる事業の評価や選択が成り立つ限りにおいてです。
長期的な資金調達の手段としての株式発行と企業の成長戦略
株式は、そもそもが、企業が資金調達の手段として発行するものです。株式という資金調達方法には、定期的な利息の支払いや満期における弁済がないが故に、時間に拘束されない、という利点があります。それだけ、企業は、手取り資金を使って、企業の成長の基盤を築くための長期的な視点に立った設備投資等ができるのです。したがって、企業の成長志向がないところでは、株式による資金調達の必要もなく、株式投資も成り立たない、ということです。
キャピタルストラクチャにおける最下位としての株式
いわゆる資産の区分は、本源的に創出された事業キャッシュフローの分配に関する権利の優先劣後関係であり、キャピタルストラクチャ(資本構成)上の位置のことです。最上位が債権(券)であり、最下位の地位を占めるのが株式です。つまり、株式とは、投資家の権利の保護が一番小さな投資対象なのです。そのような株式に、なぜ投資できるのでしょうか。
株主の権利
株主の権利は、たかだか、①配当を受け取る権利、②議決権、③残余財産分配権、の三つしかありません。そのうち、事業キャッシュフローに参画する権利としての株式の経済的価値は、将来にわたる配当を受け取る権利に帰着します。
本源的投資価値としての配当
株式を所有することの本来的な意味は、将来にわたる配当を受け取る権利を手にいれることです。株価の上昇があり得るとしたら、それは、将来の配当の期待値が上昇することの結果です。
配当性向と内部留保の効率的再投資
企業経営にとって、今の利益の適正な部分を株主に配当することと同時に、将来の配当余力を大きくするために、即ち成長のために、内部留保した利益を効率的に再投資することが、課題なのです。成長とは、株主の立場からいえば、配当の成長のことです。
内部留保と資本の毀損の可能性
企業の本質として成長志向があります。しかし、成長のための内部留保は、配当性向を下げるだけでなく、留保資本の投資の非効率や失敗によって、資本を毀損する可能性を伴います。ここに、企業の経営責任の究極の姿があります。この点に関する経営への信頼がなければ、その企業の株式には投資できません。
事業キャッシュフローの源泉の厳選としての銘柄選択
事業投資という深みでの株式投資、つまり徹底した事業分析を行うという前提の投資では、そもそも、多数の銘柄を投資対象にできるはずもありません。対象に求められる厳格な条件が充足されない限り投資はあり得ず、厳格な条件を満たしたとき、満たした銘柄のみが、投資対象であり得るのです。
事業キャッシュフロー源泉に基づく分類と伝統的な表面的な分類
グローバル企業は、事業キャッシュフローの源泉が世界中に散らばっているという意味で、国籍がありません。理論的には、株式の分類は、上場地や業種や時価総額規模の問題ではなく、事業キャッシュフローの源泉の仕組みの特性によるべきです。
価値と価格と市場効率性
株式の価値は事業キャッシュフローの現在価値として算定されるものです。株式の価格は当然に価値を反映しますが、価値と価格は常時一致しているとは限りません。市場の効率性とは、その一致している度合いのことです。
投資家の主体的関与があって始めて市場の効率性が保証される
株式の価値判断に基づき、良いものを買い、悪いものを売る、という投資家の積極的関与(真のアクティブ運用です)があってこそ、市場の効率性が保証されます。その限りでのみ、労せずして効率的に分散された投資を実現するというインデクス運用が意味をもつのです。まともなアクティブ運用が機能しないとき、インデクス運用は意味をもちません。
価値と価格の差としてのバリュー(割安)とカタリスト
株式の価格が価値を下回っていることをバリュー(割安)といいます。市場原理では、その場合、価格が価値の方向へ動くことを予定しています。しかし、そのためには、何らかのきっかけが必要なのです。このきっかけのことを、英語ではカタリスト(触媒のこと)といいます。カタリストがないとき、結果として割安が割安のまま放置されることを、バリューの罠(バリュートラップ)といいます。なお、当然ですが、カタリストは、そもそもの価格が価値を下回る状況を作ったことの反転要因です。
配当重視の投資戦略
割安のままでは、何がいけないのでしょうか。割安なものは配当利回りが高い場合が多いでしょうし、下値硬直性も高いでしょう。高利回りを安定的に享受できるなら、それで十分なのではないでしょうか。割安の解消、即ち価格の相対的上昇は、あくまでも結果的に発生することが期待されるものであって、そのことが目的ではないはずです。
成長を放棄した企業の株式の意味と非公開化
理論的に、成長しない企業の株式の配当利回りは、社債金利を上回った状態で安定します。キャピタルストラクチャの下へいくほど、金利が高くなる理屈だからですし、配当性向が非常に高くなるはずだからです。しかし、そのような企業に上場の意味はないのです。非公開化もしくは被買収によって、市場から消えていくべきです。成長なきところ株式投資なし、です。
価値変動とリスク、価格変動とボラティリティ
価値は変動します。価値の毀損が真のリスクです。一方、価値変動と関係なく、価格は変動します。その振幅のことをボラティリティといいます。株式投資で真に問題としなければならないことは、価値の毀損としてのリスク、即ち、真の損失の可能性です。単なる価格の下落は、真の損失ではありません。
振幅が作り出す投資機会
株式投資の王道は、価値への投資です。しかし、株価の振幅そのものも、投資機会になり得ます。いわゆるヘッジファンド的な戦略の有効性、現金保有を認める運用など、自由な投資手法も検討しなくてはなりません。
事業価値と株式価値
事業価値とキャピタルストラクチャ(資本構成)の全体の価値とは、一致します(貸借対照表の原理)。事業価値を一定としても、キャピタルストラクチャの仕組みを変えることで、株式価値が変動する可能性があります。株式以外の資金調達の多様化と効率化によっては、株式価値を高めることもできるのです。
上位債権者の存在と適正なキャピタルストラクチャ
株式は、キャピタルストラクチャの最下位にある以上、株式と上位債権との比率が適正に保たれない限り、債権者の権利を守るためだけの役割に転落してしまうことに留意がいります。一方で、過大な自己資本は、資本利潤率の低下をもたらします。適正な債務比率は適正な自己資本比率のことですし、要は適正なキャピタルストラクチャのことです。ここで適正という意味は、まさに言葉の真の意味における適当(多からず少なからず)でなければなりません。
事業内容と資本構成に及ぶ株主の主体的な関与
良い事業をもつ企業は、良い企業です。良い企業は、適切な時期に適切な経営革新を行うことで、事業価値が企業価値に現れてくるような変革(キャピタルストラクチャの合理化や不採算事業の整理)や、事業価値を一層高めるような変革を行うはずです。企業の変革を促すような強い主張をもった投資、社会変革の視点に立脚した投資は、そのような自己変革に対して、建設的な助言として機能する、まさに変革の触媒(カタリスト)として機能するのではないでしょうか。
買えないものに値段はない
「被買収」の意味を徹底的に考え直さなければなりません。価値があるから手に入れたいのです。価値がないものは、いかに割安でも買収されない(そもそも、悪かろう、安かろうで、割安とはいわない)。割高でも買収されるような状況こそが、真の買収です。しかし、買収できない企業の株価には、値は付かないかもしれません。買えるものだけが投資対象です。
ESG(環境配慮、社会性、企業統治)の思想
環境負荷の高い企業経営、社会的費用の高い企業経営、創業家の支配的経営などは、何らかの社会的価値観の転換による、企業価値評価の変動にさらされています。ESGは、社会の価値の転換による企業価値評価の変動の可能性(リスク)を明らかにした上で、投資判断を行うものです。
次回、2012年 HC資産運用セミナー第2回は『「バリュー(割安)」運用の真の意味~本源的価値、割安状況、割安状況解消の道筋(カタリスト)~
』です。
なお、本セミナーで実施致しました「セミナーテーマに関するアンケート」の結果に関しましては、
「HCセミナー・アンケートレポート」にて公表予定です。
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