2013/6/12開催 HC資産運用セミナーvol.066「事業価値とキャピタルストラクチャ」セミナーレポート
HCセミナー
■動画ダイジェスト
キャピタルストラクチャ=資本構成
コーポレートファイナンスにおける研究の成果がキャピタルストラクチャで、70年代には理論は固まっていて、80年代から実務に適用されてきました。必要な資金をどういう形態で募るか、100%借入も100%株式(フルエクイティ)もあり得ないとすれば、その比率を決める上での何らかの理論的枠組みが必要となります。
電力会社(関西電力)を例に挙げてみると、電力料金に反映される金融コストのベースとなる資本構成は負債勘定70%、資本勘定30%で決められており、実務上は負債75%、資本25%で調達されて来ました。しかし、今や3期連続赤字となる見込みで、資本構成は9:1と自己資本が薄い状態となり、設備投資のための資金調達が困難な状態となっています。
適正な資本構成に戻すためには株式の公募が必要となりますが、増資によって希薄化をもたらす上に、現在の収益状況ではとても株主の理解は得られないでしょう。債権者の利益も株主の利益も、ともに守られる様なキャピタルストラクチャを定着させていくことが必要です。もし株式投資をやるのであれば、最適な資本構成が維持される企業以外には投資できません。
他方、増資に寄らずに資本の最適化をする上で、デット・エクイティ・スワップという方法があります。債務を株式に転換することで、自己資本の上昇と負債比率の低下をもたらし、銀行団においても、債務を放棄するより理に適っているでしょう。こうしたキャピタルストラクチャの切り直しを企業再編と呼びます。
キャピタルストラクチャはバランスシート上の負債資本勘定(右側)の議論ですが、銀行の本社ビルや社宅の保有が減った様に、事業遂行上必要な資産構成が求められる様になって来ています。資産構成を徹底的に見直すと、必要な資産でも売却することになり、これがアセットファイナンスとなります。
資産構成や事業構成が変わらなければ、いくらキャピタルストラクチャを変えてみても、企業価値は変わりません。キャピタルストラクチャは、株主と債権者の間での分配比率や、分配の優先順位を規定しているだけで、企業価値を決めているのは事業キャッシュフローということになります。事業価値と事業リスクから、あるべきキャピタルストラクチャを導き出していくことが正しい道筋となります。
成長しない企業の株式は危険準備(バッファ)のままであり、危険準備としての株式には価値がありません。株式を買うと決めて、どの株式がよいか判断するのではなく、どの事業に投資するかを決め、一番良いキャピタルストラクチャを選び取っていくことが正しい手順です。投資においては、キャピタルストラクチャの理解は絶対に必要です。
以上
当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。
詳細レポートをご希望の方は、下記アドレスまでお気軽にお申し付けください。
HCアセットマネジメント運用部:research@hcax.com
■セミナーで実施したアンケートの集計結果
理論的には、事業価値とキャピタルストラクチャ価値(ネット事業キャッシュフローの現在価値)の総計は、一致するはずです。したがって、事業価値の合計から、株式以外の全債務の価値を引くと、残りが株式価値になるはずです。さて、そうなりますと、理屈上は、株価と経営行動との関連で、次のような極端な立場を考えることができるわけであります。
1)経営とは、事業価値を高めることが目的である。事業価値を高めることは、インフロー(売上)を増やすことである。その結果、その他の要因にして同じならば、株価は上がる道理である。仮に、売上至上主義と呼びましょう。
2)経営とは、事業価値を高めることが目的である。収入(インフロー、売上)を科学的に予測できない以上、事業価値を高めることは、アウトフロー(コスト)を徹底的に科学的に管理することである。その結果、その他の要因にして同じならば、株価は上がる道理である。しかも、環境の好転等で、売上が伸びれば、株価は、一層、上昇するはずである。仮に、コスト管理主義と呼びましょう。
3)事業価値を高める努力には、大きな不確実性が付きまとう。科学的な経営とは、事業価値の維持を前提として、キャピタルストラクチャの最適構成を考える財務管理のことである。その他の要因にして一定ならば、株数を極力少なくできるように負債管理を行い、あるいは、M&Aで事業価値の定まった企業を吸収し、財務的リストラクチャリングを行うことで、必然的に株価は上昇する。仮に、財務管理主義、あるいは株主至上主義と呼びましょう。
理論的には、株価上昇を規定する要因は、概ね、以上の三点の方向へ集約されるのだろうと思われます。もちろん、理想は、三要素の適切なバランスであり、環境変化に適合した重点の適切なシフトにあるのですが、現実には、簡単ではないでしょう。
キャピタルストラクチャ=資本構成
コーポレートファイナンスにおける研究の成果がキャピタルストラクチャで、70年代には理論は固まっていて、80年代から実務に適用されてきました。必要な資金をどういう形態で募るか、100%借入も100%株式(フルエクイティ)もあり得ないとすれば、その比率を決める上での何らかの理論的枠組みが必要となります。
電力会社(関西電力)を例に挙げてみると、電力料金に反映される金融コストのベースとなる資本構成は負債勘定70%、資本勘定30%で決められており、実務上は負債75%、資本25%で調達されて来ました。しかし、今や3期連続赤字となる見込みで、資本構成は9:1と自己資本が薄い状態となり、設備投資のための資金調達が困難な状態となっています。
適正な資本構成に戻すためには株式の公募が必要となりますが、増資によって希薄化をもたらす上に、現在の収益状況ではとても株主の理解は得られないでしょう。債権者の利益も株主の利益も、ともに守られる様なキャピタルストラクチャを定着させていくことが必要です。もし株式投資をやるのであれば、最適な資本構成が維持される企業以外には投資できません。
他方、増資に寄らずに資本の最適化をする上で、デット・エクイティ・スワップという方法があります。債務を株式に転換することで、自己資本の上昇と負債比率の低下をもたらし、銀行団においても、債務を放棄するより理に適っているでしょう。こうしたキャピタルストラクチャの切り直しを企業再編と呼びます。
キャピタルストラクチャはバランスシート上の負債資本勘定(右側)の議論ですが、銀行の本社ビルや社宅の保有が減った様に、事業遂行上必要な資産構成が求められる様になって来ています。資産構成を徹底的に見直すと、必要な資産でも売却することになり、これがアセットファイナンスとなります。
資産構成や事業構成が変わらなければ、いくらキャピタルストラクチャを変えてみても、企業価値は変わりません。キャピタルストラクチャは、株主と債権者の間での分配比率や、分配の優先順位を規定しているだけで、企業価値を決めているのは事業キャッシュフローということになります。事業価値と事業リスクから、あるべきキャピタルストラクチャを導き出していくことが正しい道筋となります。
成長しない企業の株式は危険準備(バッファ)のままであり、危険準備としての株式には価値がありません。株式を買うと決めて、どの株式がよいか判断するのではなく、どの事業に投資するかを決め、一番良いキャピタルストラクチャを選び取っていくことが正しい手順です。投資においては、キャピタルストラクチャの理解は絶対に必要です。
以上
(文責:峯岸・佐藤)
当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。
詳細レポートをご希望の方は、下記アドレスまでお気軽にお申し付けください。
HCアセットマネジメント運用部:research@hcax.com
■セミナーで実施したアンケートの集計結果
理論的には、事業価値とキャピタルストラクチャ価値(ネット事業キャッシュフローの現在価値)の総計は、一致するはずです。したがって、事業価値の合計から、株式以外の全債務の価値を引くと、残りが株式価値になるはずです。さて、そうなりますと、理屈上は、株価と経営行動との関連で、次のような極端な立場を考えることができるわけであります。
1)経営とは、事業価値を高めることが目的である。事業価値を高めることは、インフロー(売上)を増やすことである。その結果、その他の要因にして同じならば、株価は上がる道理である。仮に、売上至上主義と呼びましょう。
2)経営とは、事業価値を高めることが目的である。収入(インフロー、売上)を科学的に予測できない以上、事業価値を高めることは、アウトフロー(コスト)を徹底的に科学的に管理することである。その結果、その他の要因にして同じならば、株価は上がる道理である。しかも、環境の好転等で、売上が伸びれば、株価は、一層、上昇するはずである。仮に、コスト管理主義と呼びましょう。
3)事業価値を高める努力には、大きな不確実性が付きまとう。科学的な経営とは、事業価値の維持を前提として、キャピタルストラクチャの最適構成を考える財務管理のことである。その他の要因にして一定ならば、株数を極力少なくできるように負債管理を行い、あるいは、M&Aで事業価値の定まった企業を吸収し、財務的リストラクチャリングを行うことで、必然的に株価は上昇する。仮に、財務管理主義、あるいは株主至上主義と呼びましょう。
理論的には、株価上昇を規定する要因は、概ね、以上の三点の方向へ集約されるのだろうと思われます。もちろん、理想は、三要素の適切なバランスであり、環境変化に適合した重点の適切なシフトにあるのですが、現実には、簡単ではないでしょう。
Q1 過去の日本の株価は、平均値としては、上昇していませんが、背景に、平均的な日本企業の経営の問題性があるのだと仮定した として、その問題とは何でしょうか。以下の中から、一番近いとお考えになるものを、一つだけお選びください。
1.日本経済が低成長に転じた後も、売上至上主義的経営方式から脱却できず、コスト管理面、財務管理面の経営技術に、弱点があったから。
2.低成長を前提にしたコスト管理的側面が強くなりすぎて、肝心の成長志向が弱くなったから。
3.財務管理のあり方に、株価(株主)重視の視点が弱すぎたから。
4.その他
2.低成長を前提にしたコスト管理的側面が強くなりすぎて、肝心の成長志向が弱くなったから。
3.財務管理のあり方に、株価(株主)重視の視点が弱すぎたから。
4.その他
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