2014年4月9日(水)開催 HC資産運用セミナーvol.076「金融の社会的機能と資産運用」セミナーレポート
HCセミナー
■動画ダイジェスト
1. 金融の社会的機能について
住宅ローンは取得した不動産を担保に融資を受けるのが通説ですが、現在、多くが借換え目的です。本来ならば住宅ローンの経済効果は大きいはずですが、借り換え目的ゆえに住宅は建っておらず、経済効果はほとんど皆無でしょう。金利が低下すれば実質所得は拡大し消費の拡大が見込めますが、現在の低金利環境で更に金利が低下したとしても借換え競争が生じるだけです。一方でマクロ経済的には、金利の一段低下時に銀行収益に与える影響軽減のため、借換え競争を起点として競争原理を掻き立てる必要性が大きいのも事実です。
他方、改築ローンによる経済効果は期待できます。改築によって事業を創出し地域内の産業連関を構築するからです。一般的には住宅価値の逓減よりも住宅ローンの減債スピードの方が速く、両者の差(ホームエクイティ)は時間の経過とともに漸増します。米国ではこのホームエクイティを改築によって更に増価させるよう需要を喚起しホームエクイティローン(金利の高い二次抵当ローン)を組成しているのに対し、本邦金融市場においては借換え目的の無担保住宅ローンとともに、改築ローンも同時に提案する手法に帰結しました。両者とも金融技術と経験によって収益性を裏付けた社会的に意味のあるものであり、これこそが金融の社会的機能です。
2. 金融と産業の関わりについて
元来、株式市場は株の引受けを前提として、産業界に資金を流通させるのが本義本質で、既発株式を売買するだけでは何の経済価値もありません。不動産に投資する場合、直接又は間接的にでも物件が建たなければ無用の長物です。米国では不動産開発業者(経営)と不動産ファンド(所有)が機能的に分離しています。建物を建設し、開発した建物を順次ファンドに売却することで当該資金を次の開発に充てて価値を創造し、資本の効率を高めています。この原点には、地位経済の活性化を金融的に支援する本流があります。故サッチャー政権時代には、資本市場改革を学ぶべく、日本の金融機関から何千人もがロンドンに駐在していましたが、未だに資本市場改革は実現されていません。特に欧米ではノンバンクの影響力が相当程度大きく差別優位の競争原理が働いていますが、日本では未だ銀行の影響力が大きいことが、改革が未だ道半ばであることの証左となっています。但し、地域貢献を意識した上述の信用金庫のような業態では、優良な融資を作り出し、結果的に地域産業の成長に貢献し、それが更なる案件を生み出すことで安定した収益性を獲得している事例が多く見受けられます。換言すれば、産業金融の王道を歩む以外に道はないことを示唆している稀有な業態かもしれません。
3. 投資の原点とは
投資の原点とは、産業界にいかに資金が流入するかを科学的な工夫を凝らして投資対象としていくことで金融リテラシーを高め、「産業金融の王道」としての本来の資産運用ビジネスを全うすることです。
この「産業」が成立する上で、「投機」は不可欠です。投機資金が入ってくることで先物市場や為替市場が安定することが期待されるからです。小豆のような農産物では、将来の生産量と価格に不確実性が存在し、生産者は先物を用いて価格変動リスクを抑制しています。但し、生産者が売れば価格は下落傾向となるため、投機資金で買い支えるしかありません。投機の社会的使命はここにあります。また金について言えば、これまで産金コストが極めて高いが故に産金業者は先物市場でヘッジを行っていましたが、現在は産金コストと実勢金価格の乖離が大きくなりすぎたことで、実需に対するヘッジではなく、単なる投機のぶつかり合いとなっています。最近ではシェール革命による石油・天然ガスの増産を背景に、輸送用パイプラインや関連エネルギーインフラへの積極的な設備投資に対し、世界的に投資資金が向かっています。船舶もエネルギーとの産業連関が高い上、環境基準の変更により新規案件だけでなく船殻や艤装改築の需要が高まっています。
金や船舶などの資産を投資対象とならしめるためには、第一に高度に精練された投資哲学に遡り、投資しようとしている対象が投資哲学から外れているか否かを判断することです。次に、バリューチェーン全体を抑えて漸増する付加価値をキャッシュフローの本源まで遡って分析し、個別具体的なリスクを最大限制御することです。投資家は上記を満たせるよう研鑽に励み、オープン且つ受託者責任を全うできるよう、産業金融発展をも意識した投資を行うべきではないでしょうか。
以上
(文責:西山和宏/白木智雄)
当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。
詳細レポートをご希望の方は、下記アドレスまでお気軽にお申し付けください。
HCアセットマネジメント運用部:research@hcax.com
■セミナーで実施したアンケートの集計結果
Q1 資産担保証券(例えば、サブプライム関連の証券)について、原資産(例えば、サブプライム・ローンそのもの)に投資価値がないときでも、証券の構造を工夫することで、投資価値を作ることはできるでしょうか。一番近いと思われるものを、一つだけお選びください。
1.原理的に、あり得ない。
2.格付機関が評価しているのだから、問題ない。
3.投資価値のある部分とない部分に分かれるのだから、価値のある部分だけに投資すればよい。
4.その他
5.無回答
2.格付機関が評価しているのだから、問題ない。
3.投資価値のある部分とない部分に分かれるのだから、価値のある部分だけに投資すればよい。
4.その他
5.無回答
Q2 「宝くじ」の発行は、実は、地方自治体の資金調達です。しかし、「宝くじ」は、購買者全体についての期待収益率が大幅マイナス(約-50%!)で確定するので、購入する経済合理性はありません。そのような「宝くじ」の発行で、宣伝広告までして、資金調達を行う自治体の行為は、なぜ正当化されるのでしょうか。一番近いと思われるものを、一つだけお選びください。
1.「庶民の夢として愛され、親しまれ、定着したファンをもつ」から(日本宝くじ協会ウェブサイトより)。
2.法律(当せん金付証票法)で定められているから。
3.金融商品取引法の適用がないから。
4.資金使途が、公共のものだから。
5.本来は、正当化され得ない。
6.その他
7.無回答
2.法律(当せん金付証票法)で定められているから。
3.金融商品取引法の適用がないから。
4.資金使途が、公共のものだから。
5.本来は、正当化され得ない。
6.その他
7.無回答
Q3 ベンチャーキャピタルが全く新しいスタートアップの企業や創業間もない企業に投資することは、究極の成長支援という意味で、ベンチャーキャピタルにしかできない金融の社会的役割です。しかし、一方で、合理的な事業キャッシュフローの推計に、限界のあるのは事実です。創業支援は、適格な投資であり得るのでしょうか。一番近いと思われるものを、一つだけお選びください。
1.事業キャッシュフローの推計は難しくても、事業モデルの妥当性や合理性は評価し得るのだから、適格な投資である。
2.ひとつひとつの案件ごとに、投資の適格性を議論することはできない。複数投資することで、統計的な制御がなり立つ限りでのみ、適格な投資である。
3.投資後の様々な経営支援活動(いわゆるハンズオン)によって、積極的にリスク管理できるという条件の下でのみ、適格な投資である。
4.創業直後の投資は、適格性を欠く。ある程度、事業キャッシュフローが読める段階に達した企業に、投資は限定すべきである。
5.その他
6.無回答
2.ひとつひとつの案件ごとに、投資の適格性を議論することはできない。複数投資することで、統計的な制御がなり立つ限りでのみ、適格な投資である。
3.投資後の様々な経営支援活動(いわゆるハンズオン)によって、積極的にリスク管理できるという条件の下でのみ、適格な投資である。
4.創業直後の投資は、適格性を欠く。ある程度、事業キャッシュフローが読める段階に達した企業に、投資は限定すべきである。
5.その他
6.無回答
« prev | next » |