2014/4/22開催「第1回産業金融フォーラム」レポート(1)基調講演
HCセミナー
4/22(火)日本政策投資銀行・HCアセットマネジメント共同開催、日本経済新聞社後援、金融財政事情研究会協賛「第1回産業金融フォーラム-産業と金融のオープンイノベーション戦略-」のレポート第一弾をお届けいたします。当フォーラムは、昨年に開催しました弊社創業10周年事業・産業金融フォーラムの趣旨を引き継ぎ、日本の成長戦略実現のため、それを支援する金融のあり方、また産業界側からは資金調達面からみた企業統治のあり方について議論を行うことを目的に開催いたしました。まず、基調講演では、株式会社LIXILグループ代表の藤森義明氏より「LIXILの挑戦 ~グローバル化への取り組み~」というテーマにてお話頂きました。内容を下記にご紹介させて頂きます。
LIXILは、日本国内では数少ない住生活に関連するサービス全般を提供することを通じて、「住生活産業のグローバルリーダー」になる事を目標に掲げています。そのために、日本的経営の桎梏から脱皮し、積極的なM&Aを通じた海外戦略を展開しています。弊社は3年前の2011年4月にトステム、新日軽、INAX等が経営統合して発足し、海外売上高を2016年までに1兆円(国内売上高を含め計3兆円)、ROE8%という野心的な経営目標を掲げています。海外、特に欧州や新興国市場のシェア拡大に焦点を充てている背景は、少子高齢化を含む国内市場では大きな成長が見込めないため、国内コア事業をリフォーム市場に移行しつつ、内需依存型からの転換を目指した既存の事業ポートフォリオとの地域補完性やコアシナジー効果を追求すべく、これらの地域に事業機会を見出しているからです。
弊社は世界的なブランドを有する住生活関連製品群を傘下に収めつつ、上流から下流まで幅広いバリューチェーンをグローバルに展開していますが、事業拡大にあたり重視している点は、1.圧倒的なブランド力、2.革新的な製品力、3.充実した流通網、4.高い収益性、5.強い人財(リーダー)、6.多様性です。これらを踏まえ、グローバルな視点に基づくスピード経営を重視し、これまでに伊建材ペルマスティリーザや米衛生陶器アメリカンスタンダードを買収し完全子会社化してきました。加えて、昨年9月には日本政策投資銀行(以下、「DBJ」)と共同で独水洗金具最大手グローエを買収し、欧州圏での確固たる地位を確立する足掛かりとしました。
しかしながら、グローエ買収はこれまでの相次ぐ買収で自己資本比率が低減していた弊社単独の資本および通常の資金調達では実現不可能でした。そこで、DBJ支援の下、弊社とDBJがSPCを通じて同社発行済株式(議決権は折半)を取得し、民間大手銀行による直接出資やグローエの負債をノンリコースローンで賄う事で解決しました。グローエ買収スキームは、LIXILのバランスシートや格付けを悪化させる事なく、革新的な資金調達を実現できたからこそ成立した恰好の事例だと言えます。これによりLIXILは既存の伝統あるブランドを放棄し、新規にリーディング・カンパニーとしての新たな統合ブランド価値を創造する事ができたと確信しています。
こうした一連のM&Aにより、5年後には海外部門のEPSを現状から約4倍にし、経営目標を達成できる見込みです。なぜなら規模の経済による資材調達やサプライチェーンの改善を通じた生産の合理化を追求し、価格競争力の向上が期待できるからです。但し、グローバル企業への脱皮に向けた弊社の挑戦において、株主ら利害関係者からの信頼を獲得し、着実な収益による持続的な成長のためにこれまで以上に人事・会計・法務・IT等の幅広い分野でグローバルな企業統制の変革が求められています。この要請に応えるべく、多様性を尊重する文化(Diversity)や誰もが平等に評価され活躍する機会(Equal & Opportunity)を提供し、従来の階級体制を打ち破って弊社の価値観に対する実践力や組織統率力で評価される実力重視(Meritocracy)の組織体制を構築しています。
弊社のように、これまで日本文化に根付いた企業が世界に事業展開をし、企業価値向上を促進するには、成長資本の供給を多種多様な金融技法を通じて産業構造を変革していく事が、何よりも先ず、今の日本には必要だと考えています。その上で、自らの強みを活かしてグローバル社会からの期待に応え、自らが社会・環境に及ぼす影響を改善し、それをマクロの視点から躬行実践し、社会から確固たる信頼を得る事ができるでしょう。
(文責:HCアセットマネジメント株式会社)
◎レポート(2)―パネルディスカッション①「企業の成長戦略と財務戦略」―のレポートはこちら
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