2014年10月8日(水)開催 HC資産運用セミナーvol.082「非流動資産への投資の魅力」セミナーレポート
HCセミナー
■動画ダイジェスト
【市場と流動性】
先日金融庁から平成26年度の金融モニタリング基本方針が発表されましたが、重点施策として、
1.顧客ニーズに応える経営
2.事業性評価に基づく融資
3.資産運用の高度化
4.マクロ・プルーデンス
以上四項目が掲げられており、これまでにない画期的な方針が打ち出されました。リスク管理や経営管理態勢(ガバナンス)の向上のみならず、各金融主体の業態特性に踏み込んで、金融機関の収益が産業界、ひいては国民生活への経済の好循環の実現を期待しており、デフレ脱却に向けた取り組みを要請しています。
横並びの画一性を排し、同じ行動を避けることが求められているわけですが、それは投資行動を一斉に引き上げることで生じる影響を懸念しているためです。そもそも流動性のある資本市場は売る人・買う人が均質なることが前提ですが、市場の攪乱要因によって構造的に売り・買いが一方向に圧倒的に偏り、ボラティリティが過大になります。資産運用において流動性は重要な要素ですが、流動性そのものがマーケットを崩壊させる要因になり得ることも認識しなければなりません。
【非流動的なプライベート投資】
流動性の高いパブリック(市場型)な投資よりも、相対で行う非流動的なプライベート(関与型)な投資の方が、リスク管理の点において、実はローリスクハイリターンたり得ることはあまり認識されていません。プライベート投資の対象は不動産やインフラ等様々な資産が考えられますが、その中でもプライベートエクイティ(PE)が典型的な形態として挙げられるでしょう。PEは相対の交渉のなかでコベナンツの活用による“売らない”ことを前提としたリスク管理のみならず、積極的な経営陣への働きかけなどバリューアップで価値を創造することで、高いリターンをも期待できます。
事業性に基づく投資の評価は専門的であり、ドキュメンテーションなど運用者に求められるスキルも高いのですが、残念ながら日本の運用業界においては、営業担当者の数が圧倒的に多く、高度なスキルを有する運用者が育っていないことが現実です。銀行は業として、担保主義からの脱却が進み、予見可能性の高いキャッシュフロー(CF)ベースの融資行動へ進化を遂げているものの、将来CF・事業性を評価した融資までには至っていません。事業性・成長可能性を見据えた融資はもはや投資の領域ですが、そういった取り組みが求められているのは、日本の個人金融資産の預金への偏在の解消、資金循環を円滑にして産業競争力を強化することが不可欠であるからに他なりません。金融商品取引業者においても顧客ニーズを考えた金融商品・サービスの提供という責務、「フィデューシャリー・デューティー」を果たすため、運用能力の向上・運用の高度化は運用金融庁の指針でも求められるところです。
流動性とは、低コストでの現金化の可能性とも言えますが、現金化は売却に限らず、むしろ、利息配当金と元本の回収によるのが本来の姿です。利息配当金等の予定額が入れば、年金であれ、財団であれ、金融機関であれ、資産運用の目的は実現します。所謂非流動的資産でも、エクイティである必要はなく、資本構成における上位資産・デット投資であれば、CFは予見可能です。定期配当があり、元本価値の確保が図られる限り、資産運用の本来の目的としての流動性がある、といえるはずなのです。
非流動的なプライベート投資では、案件発掘の都度キャピタルコール(払込み要求)がある一方、配当があることでキャッシュフロー管理が面倒になりますが、アウトソーシングという方策もあります。ゴーイング・コンサーンとしての年金運用において、これほど適した投資対象はないでしょう。
以上
(文責:峯岸)
当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。
■セミナーで実施したアンケートの集計結果
Q1 平均的な年金基金にとって、流動性の低い資産の組入れに上限を設けるとしたら、総資産の何パーセントくらいが適当だと、お考えでしょうか。 一番近いものを、一つだけ、お選びください。
1. 5%以下
2. 10%以下
3. 20%以下
4. 30%以下
5. 50%以下
6. そもそも上限など不要
7. 無回答
2. 10%以下
3. 20%以下
4. 30%以下
5. 50%以下
6. そもそも上限など不要
7. 無回答
Q2 もしも、流動性の低い資産を投資対象として積極的に検討するとしたら、その魅力は、どのような点に、見出されるのでしょうか。一番近いものを、一つだけ、お選びください。
1. 相対的に、流動性の高い資産に比べて、割安である
2. 時価評価による影響が小さい
3. 債券や株式との相関が低い
4. 運用者による付加価値(バリューアップ)を期待できる
5. その他
6. 無回答
2. 時価評価による影響が小さい
3. 債券や株式との相関が低い
4. 運用者による付加価値(バリューアップ)を期待できる
5. その他
6. 無回答
Q3 逆に、流動性の低い資産を投資対象として積極的に検討し難いとしたら、その難点は、どのような点に、見出されるのでしょうか。一番近いものを、一つだけ、お選びください。
1. 不測のキャッシュフローに備えた売却可能性は必要
2. 資産全体のリスク管理上、売却によるリスク調整は必要
3. 時価評価がなされなければ、資産の適切な管理ができない
4. 運用者の運用能力に依存する度合いが大きすぎる
5. 成果が出るまでの時間が長すぎる
6. わかりにくい
7. 無回答
2. 資産全体のリスク管理上、売却によるリスク調整は必要
3. 時価評価がなされなければ、資産の適切な管理ができない
4. 運用者の運用能力に依存する度合いが大きすぎる
5. 成果が出るまでの時間が長すぎる
6. わかりにくい
7. 無回答
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