2014/10/27開催 年金資産運用実践講座第1回・セミナーレポート

HCセミナー




第1部「基礎的な利息配当金を確保するための運用戦略」

いかに安定的なインカムを確保するか。投資対象を選別する上で、投資対象資産にキャッシュを生む仕組があってはじめて投資対象となり得ます。果実を生まないものは投資対象ではありません。「金」、「絵画」、「骨董品」、「土地」なども果実を生まないため投資対象とはなり得ません。ERISA法設定後の40年間、米国では投資対象資産について吟味し続けており、「土地」のような果実を生まない資産は投資対象資産から除かれています。

9月11日、金融庁から金融モニタリング基本方針が公表され、フィデューシャリー・デューティーについて言及されました。米国では、投資対象の「適正性」が、フィデューシャリー・デューティーの最重要項目に挙がっておりますが、投資対象が魅力あるものかどうかの判断はあくまでキャッシュを生むかどうかで始まります。このキャッシュを生む事業が投資対象であるとの考えを基準とすれば、「企業」ではなく「事業」に投資しているはずなので、「株を買っている」と考えるのはおかしいと思います。何度も繰り返しますが、投資対象の判断は
1.キャッシュを生むスキームか、
2.固定的に安定したキャッシュを生むのか
の2点です。

太陽光発電事業は、固定買取制度が揺らいだことにより、「キャッシュを生むハズだった事業」になってしまいます。キャッシュの予測が確からしいもので、なるべく早く回収でき、金額は大きいほうがよいのは当然です。
2008年のリーマンショック時、債券でさえも最低20%は下落しておりましたが、殆どショック前の価格に戻りました。結局本当にキャッシュを生むスキームがこわれたものはわずかであり、不動産価値はほとんど減価していませんでした。レバレッジを含む投資手法に誤りがあっただけで、不動産で損をすることはあり得ません。

株価が上がる、下がると一般的に言われていますが、企業はこれまで継続的にキャッシュを生み出しており、キャッシュを生むかどうかを基に考えれば、根本的におかしな話です。



第2部「投資機会をとらえて追加的収益率を目指すための運用戦術」

効率的資本市場仮説の条件に1.完全情報対称性、2.合理的経済人の2つがあります。両方ともあり得ないことであるからこそ、100円の価値のものが80円の価格で売られることがあります。安くなる理由が判明すれば「本源的価値」である100円に戻るはずです。この理由判明の要素を「カタリスト」と言います。リーマンショックの例では、各国政府の金融システム安定への強力なコミットが「カタリスト」であったと言えます。
バリュー投資の難しさですが、安いかもしれないが「カタリスト」がないのではないかというケースがあります。3年を超えて価値に戻らないものはもう辞めたほうがいいと思います。

資産運用の規律の問題ですが、投資の意思決定として、買う時点で売る意思決定を同時に行うことです。運用会社にとってビジネスの規律とビジネスの経済性を両立させるのは非常に難しいですが、「買う」「売る」という意思決定を別々の2つにすると判断を誤ると思います。人間は意思決定が増えると判断を誤る可能性が増えると思われるため、1つの意思決定とすべきです。

現保有銘柄の何倍ものリサーチ銘柄がなければ運用業界はやっていけませんが、投資の業界の主流は「融資」です。金融モニタリング基本方針でも言及された、マクロプルーデンス、資産運用の高度化に加え、銀行の融資は現状の「担保主義の是非」から「顧客の事業キャッシュフロー」担保へシフトすべきでしょう。事業性評価がなされても銀行の融資対象となり得ない事業は、投資の業界から「融資」されますが、この「融資」は銀行と比べると高利であり、事業者には高利の借入は早めに返したいというインセンティブが働きます。故に短期回収が実現します。事業が軌道に乗った後は低金利での銀行による融資へとつながります。

以上

(文責:広川 聡)

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