2015年5月19日(火)開催 HC資産運用セミナーvol.089『社会常識でわかる投資の基本』セミナーレポート
HCセミナー
■動画ダイジェスト
投資というと資金調達から独立したものと考えている人が大多数です。
融資契約書は1枚しかありません。お金を貸すこと、借りることの2つがある訳ではありません。企業の財務担当者で「投資がよく分からない。」という人がいますが、「資金調達がよく分からない。」と言ってしまえば財務担当としてクビでしょう。企業において資産運用が分からない、投資が分からないというのは、「コーポレートガバナンス・コード」が分からないということと大差はないのではないでしょうか。
6月1日から上場企業に対して「コーポレートガバナンス・コード」が適用されます。comply or explain。順守するか、しないなら理由を説明する。ほとんど全ての企業がcomplyするでしょう。企業は株式発行を通じて資金調達をしています。それなりの資本コストがかかっているはずです。適正な資本コストでなければ、株主が納得するような配当でなければ、借金を踏み倒しているのに近い。資本コストは商売の向き、経営環境、時間軸によって違います。6月1日以降、明確に株主に説明ができなければいけません。「投資がよく分からない。」という訳にはいかないでしょう。
「コーポレートガバナンス・コード」によって「資金調達」の合理化が単品で走っていく訳はありません。「資金運用」の合理化が単品で走っていく訳でもありません。「車の両輪」という表現を現安倍政権は用いておりますが、運用者側には、企業側の「コーポレートガバナンス・コード」に対して、「スチュワードシップ・コード」が課されます。「資金運用」の高度化=「資金調達」の高度化が求められます。こうして、市場の投資収益率と企業の資本利潤率ともに改善していくことを目指しています。
「コーポレートガバナンス・コード」は今後状況に合わせてどんどん改訂されていくようですが、改訂される中で企業年金の適切な運用についても言及されるでしょう。
ある大学で、校舎建築に使う予定の100億円を、仕組債で運用して損をしたという話があります。仕組債に詳しい方が財務課長として迎え入れられて投資をしたとのことですが、この投資は投資以前に考えが間違っています。この100億円の校舎は例えば40年償却とすれば、2.5億円が年間償却額となります。10年経てば校舎の簿価は75億円となり、減価償却費=Cash25億円。この25億円は残り30年使途がありません。この資金を運用すると考えるはずでしょう。
個人向けの投信商品に欧州ハイイールド債のトルコリラ建て、というものがありますが、売っているほうが悪いと金融庁は考えております。「日本企業価値向上ファンド」という投信もあります。立派な名前ですね。でもドル建て。なぜドル建てなのでしょう。難しい顔付きをしているものを理解しようとすることほど不毛なことはないのではないでしょうか。
投資の意思決定の要素として、どう投資するか、手間に耐え得るか、好きになれるか、等が挙げられます。例えば、予定利率が2%であるとき、資産100%を利回り2%の国債で運用するのが最も簡単でしょう。予定利率が3%であるとき、資産50%を利回り1%の国債。もう50%を5%の不動産利回りとする。簡単でしょう。好きになれそうではないでしょうか。
1980年頃、当時の立花証券社長石井久氏が作った「実践に役立つ相場格言」に「知っているものだけ買え」「買いたい銘柄が無くなったら売れ」というものがあります。この2つを足すと厳しくなります。買いたい銘柄がないのはあなたの知識が貧困だからです。もっと調べて下さい。という意見に反論できません。
数字上の操作から設備投資案件は生まれるでしょうか。設備投資案件があってはじめて検証をするのではないでしょうか。相関係数をちょっといじって、運用配分比率を変える。リターンの計測期間が過去7年半だとこうなる。なぜ7年半か。7年半だとちょうどいい数字が出る。8年だと悪い。こんなことはやめましょう。
企業はリスクをとるものではありません。リスクを管理するものでしょう。産業界の適正な資金需要に対して資金提供をするでしょう。「リスクマネーの供給」という言葉はおかしい。リスクをとる企業経営者は嫌ではないでしょうか。リスクをとる企業に投資したいと思いますか。リスク、リターン、ベンチマーク。企業経営者はこれらの言葉による説明では絶対に納得しないでしょう。資産運用も経営の言語による説明をしなければなりません。
以上
(文責:広川)
当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。
■セミナーで実施したアンケートの集計結果
Q1安倍政権の経済成長戦略と、その成長のための資本の調達の関係について、何が重要だとお考えでしょうか。一番近いと思われるものを、一つだけお選びください。
1.銀行等に対して、積極的な融資政策を求める。
2.社債市場の徹底した自由化など資本市場の整備を進める。
3.海外資本の導入を進める。
4.税制改革等により、富裕層等の資本の蓄積を進める。
5.企業年金や投資信託等の投資家の運用改革を進める。
6.「官民ファンド」のように、政府系資金の投入を行う
7.企業内の保有資産管理の効率化を徹底し、資源の再配置を行うことで、成長資本は確保できる。
8.その他
2.社債市場の徹底した自由化など資本市場の整備を進める。
3.海外資本の導入を進める。
4.税制改革等により、富裕層等の資本の蓄積を進める。
5.企業年金や投資信託等の投資家の運用改革を進める。
6.「官民ファンド」のように、政府系資金の投入を行う
7.企業内の保有資産管理の効率化を徹底し、資源の再配置を行うことで、成長資本は確保できる。
8.その他
Q2安倍政権の経済政策のなかで、産業界に対して、「成長のために、リスクをとれ」という意見があることについて、どうお考えでしょうか。一番近いと思われるものを、一つだけお選びください。
1.産業界として積極的に事業リスクをとっていくためには、大胆な産業構造改革を進めるという政策の内容が具体的に明確に示され、 かつ、それが確実に実行に移されることが先決。
2.各企業の合理的な成長戦略のなかで、事業リスクが適正に管理されるという前提のもとでのみ、リスクをとれるのだから、そのためのコーポレートガバナンス(企業統治)改革が先決。
3.日本の産業金融の中核的担い手が、現実問題として、銀行等の融資にある以上、その融資政策のなかで積極的にリスクをとることが先決。
4.融資の機能には限界があるのだから、日本の金融構造問題として、資本性の資金供給力が弱いという現実を、年金運用改革・外資導入・投信改革などの強力な政策によって、打破することが先決。
5.その他
6.無回答
2.各企業の合理的な成長戦略のなかで、事業リスクが適正に管理されるという前提のもとでのみ、リスクをとれるのだから、そのためのコーポレートガバナンス(企業統治)改革が先決。
3.日本の産業金融の中核的担い手が、現実問題として、銀行等の融資にある以上、その融資政策のなかで積極的にリスクをとることが先決。
4.融資の機能には限界があるのだから、日本の金融構造問題として、資本性の資金供給力が弱いという現実を、年金運用改革・外資導入・投信改革などの強力な政策によって、打破することが先決。
5.その他
6.無回答
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