2018年8月21日(火)開催 HC資産運用セミナーvol.128『事業価値と資本構成』セミナーレポート
HCセミナー
■動画ダイジェスト
企業は単一事業を営んでいれば問題ないが、複数事業を営むのが普通である。それら複数事業の関連性はわからない。また、連結会計により個々の事業価値がわからなくなる。個々の事業が企業レベルで、どれぐらいのウェイトを占めていたのか、連結会計ではわからない。しかし、内部の人間にはどれほどの価値かわかるはずである。各事業会社の計算ができたとしたら、事業価値の合計値と企業価値は一致するはずである。アメリカの株式市場では多くの場合、企業価値が個々の事業価値の合計を大きく下回っている。これがコングロマリットディスカウントである。これを解消するような経営をしなければならない。少なくとも事業価値の合計値に株式の価値を一致させないといけない。この状況下では一般的に、合理性なき多角化、統合による非効率、不採算事業の不整理等による負の価値のほうが大きくなる。不採算事業を一つ売れば、磨きだされる事業価値が、合併されることにより埋もれてしまい、不採算事業を温存させるような構造になっている。本当は個々の事業に投資したいのに、抱き合わせでしか投資できなくなっている。もう一つの問題は、持ち株会社(最上部の企業)の経営者の資質が問われる。連結会社のトップは、事業家ではあってはならないはずで、むしろポートフォリオマネージャーであるべき。事業会社ごとのトップであればなんら問題ないが、連結会社のトップはどこから上がってくるのか、そこが問題である。どの国の投資家であれ、素晴らしい事業にはその個々の事業に投資したいはずで、いらないものを買いたくはないというのは普通の感覚ではないのか。
日本はほとんどがコーポレートファイナンスで、これは金融機関のご都合によるものではないのか。企業金融から事業金融に転換できれば改革は起きるのではないか。企業金融の方が調達レートは低くなる傾向がある。企業レベルでは事業リスクのキャンセルアウトが起きて、リスクリダクションが生じる可能性が高い。そこでは無意識にポートフォリオ理論が働きうる。でも企業はポートフォリオではない。事業の集合である。われわれ資産運用業とは違う。こういうことは金融がやることである。東電ホールディングスは会社を三つに分割し、上に持ち株会社を創った。三つの事業はフューエルアンドパワー、パワーグリッド、エナジーサポート、持ち株会社には、この三つ以外のその他の事業が残っている。原子力発電及び福島事業を持っている。つまり、保証事業を持っているのである。そして、持ち株のほうにマイナスキャッシュフローをずらしているのである。現在、東電が出している社債は、子会社が親会社保証を付けず、パワーグリッドが出している。パワーグリッドは送電事業で、絶対収益型の事業で、社債発行がし易い。これは必要に迫られた金融の高度化であり、成功例であろう。
企業分析をする際に、アセットサイドだけ見ていればよいのではないか。純粋に事業価値を評価するなら、株式や融資で評価するのは論理的にありえない。事業性評価以外成立しえない。資産勘定の評価ができれば、負債勘定の特定は容易い。資本構成を動かそうが、事業価値は動かない。一つ一つのキャピタルストラクチャのピースの価値は変わるが、資本構成の絶対量は変わらない。なぜなら、事業価値に等しいから。そして、最適資本構成は事業ごとに違うはずである。まずは、金融はそこを理解すべきではないのか。貸借対照表は、貸借対照するわけで、資本構成上、投資家に払出す利息と配当金の現在価値は、資産勘定が生み出すビジネスキャッシュフローとイコールにならないとおかしい。事業キャッシュフローに着目した手法こそが、プライベートエクイティであろう。だからこそ、投資の原点といわれるのである。
日本ではキャピタルストラクチャアービトラージはない。なぜかといえば、そもそも種類株に種類債権がない。だからキャピタルストラクチャの一部を買って、一部を売るということができない。合併アービトラージは合併するまでは(上場廃止前)同じ株で、アナウンスされた瞬間に、企業Aと企業Bの株価はずれる。そこで本当に合併が成立して片方が上場廃止になるなら、安い方を買って高いほうを空売りする。これがキャピタルストラクチャアービトラージである。未来的には一つの会社になるのだから、安いほうを買うのである。キャピタルストラクチャの多様化は企業分析の高度化に必ず必要となり、日本でも種類株とか種類債がでてくると面白くなり益々高度化していくと思われる。
日本の金融に欠けているものはコミットメントである。こういう条件であれば、必ず投資するという確約がなければ、産業界がやっていけない。金融で大切なのはこのコミットメントである。リスクにコミットするからリターンがもらえる。コミットなきところイノベーションは存在しない。ただいうだけで終わっては、唯の評論家である。
当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。
■セミナーで実施したアンケートの集計結果
企業は単一事業を営んでいれば問題ないが、複数事業を営むのが普通である。それら複数事業の関連性はわからない。また、連結会計により個々の事業価値がわからなくなる。個々の事業が企業レベルで、どれぐらいのウェイトを占めていたのか、連結会計ではわからない。しかし、内部の人間にはどれほどの価値かわかるはずである。各事業会社の計算ができたとしたら、事業価値の合計値と企業価値は一致するはずである。アメリカの株式市場では多くの場合、企業価値が個々の事業価値の合計を大きく下回っている。これがコングロマリットディスカウントである。これを解消するような経営をしなければならない。少なくとも事業価値の合計値に株式の価値を一致させないといけない。この状況下では一般的に、合理性なき多角化、統合による非効率、不採算事業の不整理等による負の価値のほうが大きくなる。不採算事業を一つ売れば、磨きだされる事業価値が、合併されることにより埋もれてしまい、不採算事業を温存させるような構造になっている。本当は個々の事業に投資したいのに、抱き合わせでしか投資できなくなっている。もう一つの問題は、持ち株会社(最上部の企業)の経営者の資質が問われる。連結会社のトップは、事業家ではあってはならないはずで、むしろポートフォリオマネージャーであるべき。事業会社ごとのトップであればなんら問題ないが、連結会社のトップはどこから上がってくるのか、そこが問題である。どの国の投資家であれ、素晴らしい事業にはその個々の事業に投資したいはずで、いらないものを買いたくはないというのは普通の感覚ではないのか。
日本はほとんどがコーポレートファイナンスで、これは金融機関のご都合によるものではないのか。企業金融から事業金融に転換できれば改革は起きるのではないか。企業金融の方が調達レートは低くなる傾向がある。企業レベルでは事業リスクのキャンセルアウトが起きて、リスクリダクションが生じる可能性が高い。そこでは無意識にポートフォリオ理論が働きうる。でも企業はポートフォリオではない。事業の集合である。われわれ資産運用業とは違う。こういうことは金融がやることである。東電ホールディングスは会社を三つに分割し、上に持ち株会社を創った。三つの事業はフューエルアンドパワー、パワーグリッド、エナジーサポート、持ち株会社には、この三つ以外のその他の事業が残っている。原子力発電及び福島事業を持っている。つまり、保証事業を持っているのである。そして、持ち株のほうにマイナスキャッシュフローをずらしているのである。現在、東電が出している社債は、子会社が親会社保証を付けず、パワーグリッドが出している。パワーグリッドは送電事業で、絶対収益型の事業で、社債発行がし易い。これは必要に迫られた金融の高度化であり、成功例であろう。
企業分析をする際に、アセットサイドだけ見ていればよいのではないか。純粋に事業価値を評価するなら、株式や融資で評価するのは論理的にありえない。事業性評価以外成立しえない。資産勘定の評価ができれば、負債勘定の特定は容易い。資本構成を動かそうが、事業価値は動かない。一つ一つのキャピタルストラクチャのピースの価値は変わるが、資本構成の絶対量は変わらない。なぜなら、事業価値に等しいから。そして、最適資本構成は事業ごとに違うはずである。まずは、金融はそこを理解すべきではないのか。貸借対照表は、貸借対照するわけで、資本構成上、投資家に払出す利息と配当金の現在価値は、資産勘定が生み出すビジネスキャッシュフローとイコールにならないとおかしい。事業キャッシュフローに着目した手法こそが、プライベートエクイティであろう。だからこそ、投資の原点といわれるのである。
日本ではキャピタルストラクチャアービトラージはない。なぜかといえば、そもそも種類株に種類債権がない。だからキャピタルストラクチャの一部を買って、一部を売るということができない。合併アービトラージは合併するまでは(上場廃止前)同じ株で、アナウンスされた瞬間に、企業Aと企業Bの株価はずれる。そこで本当に合併が成立して片方が上場廃止になるなら、安い方を買って高いほうを空売りする。これがキャピタルストラクチャアービトラージである。未来的には一つの会社になるのだから、安いほうを買うのである。キャピタルストラクチャの多様化は企業分析の高度化に必ず必要となり、日本でも種類株とか種類債がでてくると面白くなり益々高度化していくと思われる。
日本の金融に欠けているものはコミットメントである。こういう条件であれば、必ず投資するという確約がなければ、産業界がやっていけない。金融で大切なのはこのコミットメントである。リスクにコミットするからリターンがもらえる。コミットなきところイノベーションは存在しない。ただいうだけで終わっては、唯の評論家である。
以上
(文責:森脇、大山)
当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。
■セミナーで実施したアンケートの集計結果
理論的に、企業が創出する事業キャッシュフローの現在価値、即ち、企業の事業価値は、企業が資本構成を通じて分配する利息配当金(および税金)の現在価値、即ち、企業の投資価値とは、一致します。したがって、事業価値から、資本構成上の株式以外の全負債の現在価値と、税金の現在価値を引くと、残りが株式価値(株主配当の現在価値)になるはずです。さて、そうなりますと、理論的には、株価上昇を規定する要因は、概ね、三点の考え方の方向へ集約されるのだろうと思われます。すなわち、①インフロー(売上)を増やす(これを仮に売上至上主義と呼びます)②アウトフロー(コスト)を 徹底的に管理する(これを仮にコスト管理主義と呼びます)③事業価値の維持を前提に、株式価値の最大化を目的に資本構成を最適化する(これを仮に財務管理主義と呼びます)もちろん、経営課題は、どれか一つを選択することではなくて、三要素を適切に均衡させることです。
Q1. さて、日本企業の経営の一般的傾向として、三要素の均衡を考えたとき、敢えて改善点があるとしたら、どこでしょうか。以下のなかから、一番近いとお考えになるものを、一つだけお選びください。
1. 日本経済が低成長に転じた後も、売上至上主義的経営方式から脱却できず、コスト管理面、財務管理面の経営技術に、弱点がある。
2. 低成長を前提にしたコスト管理的側面が強くなりすぎて、肝心の成長志向が弱くなってしまった。
3. 財務管理において、株式価値重視の視点が弱すぎる。
4. 特に大きな問題はなく、三要素は、日本的に、それなりに均衡している。
5. その他
2. 低成長を前提にしたコスト管理的側面が強くなりすぎて、肝心の成長志向が弱くなってしまった。
3. 財務管理において、株式価値重視の視点が弱すぎる。
4. 特に大きな問題はなく、三要素は、日本的に、それなりに均衡している。
5. その他
Q2. 過去の経緯によるバランスシート上の損失を償却する場合においても、事業価値を高めるための未来へ向けた戦略的な長期投資のためにも、自己資本の調達が必要になりますが、どのような対応が望ましいとお考えでしょうか。一番近いとお考えになるものを一つだけお選び下さい。
1. 原則として普通株式の発行による
2. 希薄化を避けるために普通株式の発行を最小化し、できるだけメザニン等を活用する
3. 希薄化を避けるために普通株式の発行を最小化し、できるだけ資産売却益の計上等を行う
4. その他
アンケート結果をPDFでダウンロードすることが可能です。
2. 希薄化を避けるために普通株式の発行を最小化し、できるだけメザニン等を活用する
3. 希薄化を避けるために普通株式の発行を最小化し、できるだけ資産売却益の計上等を行う
4. その他
アンケート結果をPDFでダウンロードすることが可能です。
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