2019/11/19(火)開催 HC資産運用セミナーvol.143『資産運用の高度化』セミナーレポート

HCセミナー
■動画ダイジェスト



 資産運用の高度化とは、どうして運用を行うのか、どのようなものに投資を行うのかといったことを、より原理化して考えることと言える。投資は、本源的価値(インカム)、損失の可能性(リスク)、価格変動(ボラティリティ)、保守主義、の4つの原則に分けて考えることができる。

 1つ目の、本源的価値(インカム)とは、投資元本から得ることのできる、果実のことである。例えば、株式であれば、本源的価値とは投資家の受け取ることのできる配当の現在価値であり、配当の原資をたどれば企業が生むキャッシュフローであるので、キャッシュフローの現在価値ということになる。同様に不動産でいえば、賃料から得られるキャッシュフローの現在価値が本源的価値である。したがって資産運用の対象となりうるのは、キャッシュフローを生んでいるもの、もしくは少なくとも、キャッシュフローを生む見通しが十分に立っている資産だけである。

 2つ目の損失の可能性(リスク)とは、本源的価値の損失、つまりキャッシュフロー創出力棄損の可能性のことを言い、3つ目の価格変動とは異なることに留意しなくてはいけない。キャッシュフロー創出力が変動することは珍しくはないが、投資全体におけるキャッシュフローがマイナスとなってしまうようなことはめったにない。損が出る場合というのは、ほとんどが、過度なレバレッジなど本源的な価値の損失とは無関係なものからもたらされる。

 3つ目の価格変動(ボラティリティ)とは、本源的な価値とは関係なく、その将来の増減予測からもたらされる価格の変動のことである。この価格変動はある人にとっては不安を煽るノイズ、また、ある人にとっては本来の価値よりも安い価格で投資を行うチャンスとなりえ、この価格変動が損失の要因とならないような運用を行うことが、高度化への第一歩ではないかと考える。

 4つ目の保守主義は、投資を行うに当たっては、キャッシュフローの予測性の確かさや、将来キャッシュフロー推計における仮定において、保守的な見方を行うのが重要ということである。

 投資を行うにあたって、投資対象の分類、選択、配分がなされなければならない。投資対象を分類する際には、選択基準を定め、それをもとに分類することとなる。そして、分類のもととなる選択基準はキャッシュフローの源泉によるのが最もふさわしい。そしてキャッシュフローの源泉による分類を行うのであれば、近年多くの運用で用いられている、国別の分類や、アセットクラス別の分類ではなく、産業別の分類が最も適切ではないか。キャッシュフロー源泉による分類ができれば、その後に、どのような手段で各源泉への投資を行うかを選択することとなる。もちろん、その手法は株式や債券だけでなく、多種多様な手法の中から、最も効率が良いと思われるものを選択しなければならない。

 リスク管理においては、意図して取るリスク、取りにいくリスクに付随するため管理しなければいけないリスク、絶対に取ってはいけないリスクの3つに分けて管理できる。意図して取るリスクはリターンの源泉となるリスクであり、チャンスとも言い換えることができる。管理すべきリスクはクレジットリスクを取るために債券に投資した際に付随してついてくる金利リスクのようなものであり、一定値以下に抑えるという管理手法が望ましいと考える。意図して取るリスクはより狭く、厳格であるほうが、リスクの独立性が高まり、複数の意図して取ったリスク間の分散効果が高まる。逆にインデックス投資で意図的に取ることとなる、マクロリスクのような広範なリスクは、他のリスクとの分散効果というものは望みにくいと考える。




以上

(文責:酒見、大山)

当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。






■セミナーで実施したアンケートの集計結果

Q1. オルタナティブという資産区分類について、どうお考えでしょうか。一番近いものを、一つだけお選びください。

1. あまりにも雑な分類であり、意味はないが、かわるべき分類方法がないので、しかたない。
2. 他の分類方法を工夫して、廃止すべきもの。
3. 雑ではあるが、それなりに便利なので、いまのままでいい。
4. 無回答

Q2. 資金調達手段の多様化が進展し、運用対象も拡大できるようになってきましたが、どうお考えでしょうか。一番近いものを、一つだけお選びください。 

1.  新しい投資対象は、過去の実績がなく、理解しにくいので、基本的には投資対象外。
2.  伝統的4資産+オルタナティブの枠内で投資を検討する。
3.  積極的に投資する。
4. 無回答

Q3. 資産運用高度化に関し、どのようなことが課題だとお考えでしょうか。一番近いものを、一つだけお選びください。


<クリックで拡大>
1. 人材の確保と育成
2. リスクアペタイト・フレームワークの確立
3. その他
4. 無回答


アンケート結果をPDFでダウンロードすることが可能です。