2021/3/16(火)開催 HC資産運用セミナーvol.159『資産運用の歴史と実践』セミナーレポート

HCセミナー
■動画ダイジェスト




 日本ではようやく金融構造改革が始まったばかりだが、金融の資本市場化は1980年頃、長い不況にあった英国と米国において同時に始まった。キャピタルマーケットの改革には、“フィデュ―シャリー・デューティー”の確立が不可欠であり、利益相反の絶対的な排除が重要。英国ではコモンローと並ぶ法体系として中世に確立し、米国もそれを踏襲し、唯一フィデュ―シャリー・デューティーを成文法として定めたのがエリサ法である。日本の遅れには、時間の経過が決定的な障害をもたらしている。つまり、現在の日本の低金利の状況と、当時の英米の金融経済情勢があまりにも異なっている。また、利益相反が厳格に定義なされていないが故に、利益相反のおそれが金融界に横行していることも大きな問題である。

 日本は、厳しい法律概念がなく、今日まで劇的な変化がなされていない。1990年4月、改正厚生年金保険法が施行されたのを機に「給付の委託」から「給付費用(即ち資産)の委託」へと改正され、投資顧問会社への運用委託が可能になった。それにより委託額は新規掛け金に限定した極めて限定的なものから、1994年に既存掛け金も委託可能となり、1996年、資産配分規制も段階的に緩和され適用除外が許可制になった。しかし1997年の金融危機に端を発し、国は急激な規制緩和を図り、運用結果を委託者の自己責任とするとした上で、あらゆる規制を撤廃。企業年金よりもはるかにに脆弱な厚生年金基金への規制の撤廃は何の根拠もない唐突なものであった。

 機関投資家というものが他に実在しない日本において、第三者のために運用をしている企業年金が、投資信託と並び、高度化して果たすべき役割は大きい。しかし現状は日々衰退を続けているのではないか。企業年金を維持するためには、企業経営者が企業年金の必要性を認識することが第一歩であり、より少ない費用で投資成果を実現しようと思うからこそ運用の高度化が起きる。法律上の枠組みを作ることは重要で、第二次安倍政権下で着実に進んできた。しかしそれを実効性のあるものにするのは、政府ではなく民間であることを覚えておく必要がある。つまり、政府の仕事はあくまで民間がやらなければならないことをやるために制度の障害を取り除くことであり、制度のあらゆる欠陥を指摘するのは民間の役目であるということだ。



以上

(文責:神山、大山)

当日配布資料をPDFでダウンロードすることが可能です。




■セミナーで実施したアンケートの集計結果

Q1. 日本の産業の明るい未来にとって、確定給付企業年金は、どのような位置づけにすべきとお考えでしょうか。一番近いと思われるものを、一つだけお選びください。

1. 日本産業の国際競争力は、製品・サービスの質の高さに依存する。その質を維持するためには、雇用の質が重要となることから、安定雇用の柱として、改めて、確定給付企業年金は戦略的に重要なものとして再認知されるべき。
2. 確かに、安定雇用は重要だが、確定給付企業年金は、企業の財務的不確実性を大きくしてしまうので、確定拠出等への移行を通じた相対的縮小は、不可避。
3. グローバル競争に勝ち抜くためには、確定給付企業年金は、日本企業の人事制度として、不要である。
4. その他    
5. 無回答                  

Q2. 老後2000万円問題にもみられるとおり、今後の個人の資産形成はますます重要になると思われますが、あなたは、どのような資産運用が良いとお考えですか。


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1. 株式投資中心 (インデックス運用)
2. 株式投資中心(個別銘柄選択)
3. 債券投資中心 (国債など安全性重視)
4. 債券投資中心 (ハイイールド債など利回り重視)
5. バランス型(4資産配分など)の投資信託を購入
6. インカムゲインで安定性を確保しつつ投資機会を分散してプラスαを狙う投資信託を購入
7. その他


アンケート結果をPDFでダウンロードすることが可能です。