リスクシェアリング(Risk Sharing)
2018/06/06更新リスクシェアリングとは、金融と実業との間で、事業のリスクを負担する割合を調整することである。たとえば、銀行が企業に融資する場合と、投資として出資する場合とでは、リスク負担の割合が異なる、即ちリスクシェアリングの構造が違う。リース契約の場合も、ファイナンスリースからオペレーティングリースへ、そしてレンタルへと変換していくと、それに応じて、事業リスクは、リース資産を利用している顧客企業からリース会社に順次移行していく。すなわち、リスクシェアリングの構造が変化していくのである。故に、順次にリース料も高くなる。伝統的なリスクシェアリングでは、一方に、金融側のリスクを最小化する融資や社債等の負債取引があり、他方に、金融側のリスクを最大化する株式という資本取引があるが、現在では、金融の高度化により、その中間に様々な濃淡でリスクシェアリングを設計する方法、即ちメザニンや劣後構造の設計がなされている。しかし、メザニン等は一つの企業と金融との間のリスクシェアリングの技法にすぎない。産業全体において各企業のリスクをシェアリングして、産業全体のリスクに転換し、その産業のリスクと金融との間でリスクシェアリングを図るのが、リースや不動産等の実物資産を使う取引である。
「動的な監督」の下では、金融機関は、事業目的の遂行のためのリスクテイクが核になり、ビジネスモデルの個別性が問題となる。ビジネスモデルの個別性とは顧客の特定のことで、特定された顧客との間で「共通価値の創造」を実現することが求められる。「共通価値の創造」こそが、共通リスクの共有、即ち、リスクシェアリングを指す。例えば、資金調達をする顧客の企業に融資を実行する際、資金使途が計画通りに達成されてこそ、「共通価値の創造」が実現するのであって、単なる融資の実行だけでは、「共通価値の創造」にはならない。つまり、資金使途を共通課題として共有するからこそ、貸す側と借りる側の間で、「共通価値の創造」が成立する。