利益誘因

2018/03/20更新

資本主義経済の仕組みは、各人が勝手に自己の利益を追求することで、結果として、社会全体において、資源の配置が合理化され、所得の分配が公正化されるとの前提に立脚している。金融は、伝統的に規制色が濃厚すぎて基本原理が見えにくくなっていたが、金融庁が進める行政手法の革命的ともいえる転換により、利益誘因による金融力の進化という基本原理への回帰を強めている。金融庁の行政の実質的な目的は、金融機能を利用する国民、即ち金融機関の顧客の利益の保護なので、利益誘因は、論理的に、金融機関の利益が同時に顧客の利益になるように、即ち、顧客との共通価値の創造になるように、設計されるほかない。金融庁は、そこに金融機関が利益誘因を見出すように、長期的な視点にたった収益構造転換を促している。そこには、賢い金融機関から、順次、顧客との共通価値創造こそ自己の利益であるとの認識が広がっていき、顧客の利益の視点での健全な競争が始まるとの期待があるわけである。同時に、金融庁は、変革の起爆剤として、例えばベストプラクティスの紹介と普及を行い、ある金融機関での優れた取り組みを他の金融機関にも周知させることで変革を加速させようとし、また、「見える化」という名のもとで、共通価値創造の成果の開示を促して、顧客の金融機関選別の合理化を推進しようともしているのである。



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