資産形成
2018/02/28更新資産形成とは、一般に、ある将来の資金使途のために、現在の所得の一部を割いて、資金を積み立てることを意味するにすぎない。積み立てる期間は、使途によって異なるし、積み立てた資産を運用して得られる収益は、確かに、無視し得ないものであるが、形成された資産の多くは、投資収益ではなく、積み立てに充当された元手の資金である。どうかすると、投資の成果が資産を形成しているという錯覚を与え、リスクをとって長期間運用すると投資収益率が高くなるという印象を与えてしまうことが懸念される。資産形成は煎じ詰めれば、現在の所得の一部を、将来の消費のために、取り除けておくことであり、絶対的な必要性ではなく、より豊かな、より良い、より楽しい生活のためのものである。老後生活のための資産形成も、超高齢化社会のなかで、社会全体としての経済的な負担力を考えれば、公的年金や企業年金等の機能が最低生活保障へと相対的に後退せざるを得ないことを前提にしたうえで、豊かな老後生活を維持するための自助努力として、政策的に位置づけられたものである。
資産形成とは、老後生活資金の形成、正確には、労後、つまり、就労期間中の所得のうちから資産を形成し、就労を止めた後に、資産所得と資産の計画的な取り崩しによって、生活資金を確保することを、主たる目的とするものである。老後あるいは、労後生活資金ということであれば、購買力の保存が課題である。金融庁は、預貯金と保険のインフレ耐性では不十分で、資本市場での投資により、より高い収益率を追及すべきだといっていると思われる。 超高齢化社会のなかで、公的保障も、企業福利も、圧縮せざるを得ない方向にあり、ゆえに老後生活資金形成における自助努力が極めて重要となる。運用の高度化を提言することは、大きな意義がある。資金特性が超長期なので、預貯金や保険よりも、相対的に高い収益率を実現させる蓋然性を高めてくれるからである。
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